ヒュー・ジャックマン『The Death of Robin Hood』レビュー ─ A24流ダークなロビン・フッド、英雄の裏側にある苦悩や後悔描く

(カナダ・トロントから現地レポート)「富める者から奪い貧しき者に与える」。そんな美しい伝説で知られるロビン・フッドは、これまで数多くの映画や舞台、アニメ作品などで“英雄”として描かれてきた。しかし、もし当の本人が「自分はそんな立派な人間ではない」と考えていたら……。
ヒュー・ジャックマン主演、A24配給の『The Death of Robin Hood(原題)』(2026年6月19日北米劇場公開)は、これまで語られてきたロビン・フッド像を覆す作品だ。エロール・フリン主演の『ロビンフッドの冒険』(1938)、ケビン・コスナー主演の『ロビン・フッド』(1991)、タロン・エジャトン主演の『フッド:ザ・ビギニング』(2018)など、多くの作品でロビン・フッドは民衆の味方として描かれてきたが、『The Death of Robin Hood』にそんな“英雄”の姿はない。
本作のポスターには「HE WAS NO HERO(彼は英雄ではなかった)」と書かれている。白髪になり、年老い、衰えたロビンが、自らの人生と向き合い、後世に語り継がれる英雄像とのギャップに苦しむ姿が描かれる。監督・脚本を務めるのは、映画『PIG/ピッグ』や『クワイエット・プレイス:DAY 1』で知られるマイケル・サルノスキだ。
舞台は、1247年のイングランド。荒野をさまよう孤独な放浪者となったロビン・フッド(ヒュー・ジャックマン)は、かたき討ちを企てて襲いかかってくる者たちを、容赦なく殺めていく。そんな彼のもとに、かつての仲間リトル・ジョンが現れる。ジョンは今やエドワードと名を変え、妻マーガレットと農場で暮らしていたが、その農場と妻を何者かに奪われ、ロビンに奪還を頼む。ふたりは力を合わせて奪われたものを取り戻そうとするが、その過程でさらに多くの血が流れる。壮絶な戦いの末、意識不明となったロビンは、謎めいた修道女・シスター・ブリジッド(ジョディ・コーマー)に救われる。
本作の序盤は、とにかく容赦がない。グロテスクな描写が続き、映像も全体的に暗い。人の命を奪うことに全くの躊躇を見せないロビンの姿に、これまで語られてきた“英雄像”とはかなりかけ離れていると気づかされる。また、リトル・ジョンを演じるビル・スカルスガルドの変貌ぶりにも驚かされた。初見では誰だかわからないほどだ。
物語の中盤、ロビンがシスター・ブリジッドに救われ、島にある修道院へたどり着いた瞬間から映画の雰囲気はガラっと変わる。白を基調とした穏やかな映像が増え、まるで別の映画が始まったかのような転換だ。そこからはロビンの贖罪、孤児たちとの交流、そして「語り継がれる英雄像」との対峙が描かれており、物語が進むにつれ、哲学的に深く考えさせられていくドラマに仕上がっている。
これまで映像化されてきたロビン・フッドの中で、最も人間らしいロビン・フッドなのかもしれない。本作は、冒険的でも、アクション満載でも、爽快でもない。だがそれが、この映画の魅力だ。タイトルが示す通り、本作はロビン・フッドの最期までを描く。英雄像の裏側にある苦悩や後悔を描いた、A24らしいダークな一作になっている。
泥まみれになりながら戦うシーンについて、ヒュー・ジャックマンは米Peopleで「これまで経験した中でもっとも過酷な仕事のひとつだった」と語っている。感情的な演技の難しさに加え、夜間撮影、そして膨大な量の泥。そのすべてが重なって生まれたシーンだという。
本作の北米オープニング興収(6月19日〜21日)は約290万ドル、米国内ランキングは10位。同週末に公開された『トイ・ストーリー5』が1億6,000万ドルという今年最大のオープニングを記録しており、大作の影に隠れてしまった印象だ。それでも、Rotten Tomatoesの観客スコアは69%と、まずまずのスタート。「大胆な再解釈と荒廃した中世世界のリアルな描写が魅力的」「悲哀に満ちたドラマと殺伐としたアクションの融合が、数あるロビン・フッド映画との差別化に成功している」といった声も見られた。
『The Death of Robin Hood』日本公開日は現時点では未定。
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