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『Guava Island』観光映画でチャイルディッシュ・ガンビーノが歌う革命と希望 ─ 旅行気分が楽しめる映画を1日1本紹介

https://youtu.be/zDQm70Q9hKI

新型コロナウイルスの影響で、外出も制限された日々が続いている。そんな時こそ、映画で擬似旅行体験を。THE RIVER編集部から、「異国への旅行気分が味わえるオススメ映画」を厳選して1日1本、4日連続でご紹介する。旅の気分を是非お楽しみ頂きたい。

3日目は稲垣貴俊より、『Guava Island』(2019)をご紹介。

『Guava Island』

日常を離れて、あまり知らない土地に旅した時、そこで暮らす感覚をほんのひととき味わったかのように感じたことはないだろうか。ある土地の良さを気軽に楽しむこと、そこに暮らす人々の“生”を無責任に覗き込むことが「旅行」の二面性なのだとしたら、『Guava Island』にはその両方がある。チャイルディッシュ・ガンビーノ=ドナルド・グローバーが主演・製作を務め、彼の楽曲がふんだんに使用された56分間の映画だ。

物語の舞台であるグアバ島には、クレイワームという稀少な虫が生息し、人々はその繭から青い絹を紡ぐことができた。しかし、誰もが愛する美しい絹は争いの種となる。島の支配者レッドは人々を抑圧し、休みを与えずに働かせていた。ドナルド演じるデニは、そんな中でも恋人コフィ(リアーナ)と穏やかな日々を送る男だ。音楽を奏で、ラジオで島の人々に語りかけるデニの夢は、いつか人々をひとつにし、島の力を思い出させる曲を作ること。ある日、デニは島民を巻き込むフェスティバルを開こうとする。しかし、レッドはデニに中止を迫った。

『Guava Island』は一種の「観光映画」だ。グアバ島は現実に存在しない架空の島だが、キューバで撮影された青い海、緑の木々、歴史を感じさせる建物や街並みは、観る者をたちまち“島の時間”に浸らせてくれる。デニやコフィの働く波止場の倉庫と大きな工場、権力者レッドの邸宅でさえ、どこか美しいから不思議というもの。そこで繰り広げられるパフォーマンス、デニたちのさりげない会話やふるまいが、グアバ島の時間を丹念に紡ぎ出していくのだ。風が吹く海岸の木陰でデニとコフィが言葉を交わし、デニが「Summertime Magic」を歌うくだりは出色である。

旅行といえば、どうしてもあちこち巡ったり、移動したりするのをイメージするもの。しかし、その土地に少しの間“いる”ことも立派な旅行だろう。本作を観る者はグアバ島の美しさに触れ、政治に考えを巡らせ、デニ=ドナルドに導かれるまま音楽による革命を目撃し、56分間で島を去ることになる。そこで何が起ころうとも、何があろうとも、グアバ島は美しく、力強い。

もちろん本作は、チャイルディッシュ・ガンビーノによる「音楽映画」でもある。ヒット曲「This Is America」を含む圧巻のミュージカルシーンと社会風刺、シュールなユーモアなどは、ドラマ「アトランタ」や彼のMVを手がけてきたチームの才気もあって本作にも健在。グアバ島のみならず、彼が作り出す世界をほんのひととき味わえるという意味でも、これは自宅で楽しめる“旅行”なのだ。

本作の配信前日である2019年4月12日、チャイルディッシュ・ガンビーノは音楽フェス「コーチェラ」初日のヘッドライナーを務め、会場のオーディエンスのみならず、完璧に作り込まれたライブ配信で世界を熱狂させている。しかし1年後、2020年のコーチェラは開催延期を余儀なくされた。パンデミックの恐怖が世界を覆う中、チャイルディッシュ・ガンビーノは、3月半ばに新アルバム『3.15.20』を突如発表している。“Stay Home”を求められ、人々が集まることさえできない今、このアルバムとともに『Guava Island』を改めて観てみよう。確かに世界は変わったけれど、そこで歌われたデニ=ドナルドの“革命”と“希望”が、意味を変えながら、現在にも響いてくることが感じられるはずだ。

Writer

稲垣 貴俊
稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

THE RIVER編集部。「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。劇場用プログラムや各種媒体への寄稿なども喜んで承りますので、お気軽にお尋ねください。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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