『クレイフェイス』監督インタビュー ─ 「怪物の中には、常にひとりの人間がいる」『ザ・フライ』からの影響、恐怖と哀しみ、キャラクター主体の物語【限定】
人間は、どこまで姿を変えても人間でいられるのか。DCスタジオの新作映画『クレイフェイス』は、バットマンの宿敵として知られるヴィランの誕生を、壮絶なボディホラーと、胸を締めつけるような人間ドラマを融合させて描く異色作だ。
主人公は、ある事件によって顔とキャリアを失った俳優マット・ヘーゲン(トム・リス・ハリス)。失った人生を取り戻そうと禁断の治療に手を伸ばした彼は、やがて恐ろしい変貌を遂げていく。肉体が異形へと変わり果てていく生々しい恐怖の一方で、物語の根底に流れるのは、自分自身のアイデンティティを失っていくひとりの男の深い悲しみだ。
本作でメガホンを取ったのは、『スピーク・ノー・イーブル 異常な家族』(2024)などで知られるジェームズ・ワトキンス監督。マイク・フラナガンによる脚本をもとに、デヴィッド・クローネンバーグ監督の『ザ・フライ』(1986)などから影響を受けながら、単なる怪物映画にはとどまらない、恐怖と哀しみが交錯する物語を作り上げた。
THE RIVERは、ワトキンス監督に単独インタビューを実施。巨匠たちから受けた影響をはじめ、衝撃的なラストシーンに込めた思い、現代社会における容姿とアイデンティティの問題、そして新DCユニバース(DCU)でのクレイフェイスの今後まで、じっくりと話を聞いた。怪物の内側にある人間の姿を描くことにこだわった監督が、本作に込めた思いとは?
映画『クレイフェイス』ジェームズ・ワトキンス監督 単独インタビュー
──まず、本当に素晴らしい映画でした。ボディホラー映画の中でも、最高傑作のひとつだと思います。本作を製作するにあたって、デヴィッド・クローネンバーグやジョン・カーペンターといった映画監督から影響を受けた部分はありますか?
ありがとう!それはもう、ものすごく影響を受けています! お二人ともそうですね。
特に大きな影響を受けたのは『ザ・フライ』(1986)です。あの作品は、すべてがしっかりと現実に根ざしているんですよ。科学的な設定も、登場人物も、実に地に足がついている。俳優たちの演技もそうですし、何より作品の中心にしっかりとした感情があるんです。
トムとナオミには、ジェフ・ゴールドブラムとジーナ・デイヴィスの演技をぜひ観てほしいと、何度も話しました。
マイク・フラナガンの脚本にも、マットという人物がたどる道のりや、彼が経験する胸の張り裂けるような悲しみが描かれています。
私はホラー要素のある映画を作るのが好きですが、単に仕掛けとしてのホラーだけにはしたくないんです。そこには感情的な側面もなければいけない。先ほど挙げた監督たちは、まさにそのことをよく理解していたんだと思います。

──本作のクレイフェイスは、アニメ「クリーチャー・コマンドーズ」に登場したのと同じキャラクターだと聞いています。つまり、本作もDCUの正史だということですよね。将来クレイフェイスが新しいバットマンと対決する可能性について、スタジオ側と何か話し合ったことはありますか?
いえ、ありません。残念ながら、この映画の先のことについては、何も話し合っていないんです。すみません。
ただ、コミックにおける初期のさまざまなクレイフェイス像や、「クリーチャー・コマンドーズ」、それにアニメシリーズに登場したクレイフェイスも、すべて参考にしています。
ですが、それらから受けたインスピレーションは、あくまでも今回の映画のためのものです。
──マット・ヘーゲンは俳優ですから、顔や外見は彼自身のアイデンティティにとって、非常に大きな意味を持っていますよね。現代はSNSの影響もあって、かつてないほど自分の見た目を意識する時代になっています。この映画には、現代社会における美やルッキズム、あるいは他人からどう見られるかを気にしすぎる風潮に対するメッセージも込められているのでしょうか?
もちろん、この業界では、人が他人をどう評価するかということに、気まぐれで移ろいやすい側面があります。そういった要素も確かにありますね。
ただ、マットについては、彼が俳優であることや、映画スターであることばかりに焦点を当てたくはなかったんです。というのも、映画スターという存在は、必ずしも誰もが共感できる人物ではありませんからね。
私が描きたかったのは、彼にとって顔が、俳優としての「道具」だということです。顔は彼が仕事をするための手段なんですよ。だから、その顔がめちゃくちゃに壊されてしまうというのは、例えばギタリストが両手を潰されてしまうようなものなんです。
そうなると、もう仕事ができなくなってしまう。つまり、彼は生計を立てる手段を失い、自分自身のアイデンティティを失う。そして、さらには評判まで失い、すべてを失ってしまうんです。
私は、そのほうが観客にとって共感しやすいのではないかと思いました。単に虚栄心についての映画にはしたくなかったんです。もっと誰もが自分に引きつけて感じられるような作品にしたかったんですよ。

──近年のスーパーヒーロー映画には、世界を救うような壮大な物語が多いですよね。一方で、本作は、自分が何者なのかという感覚を失っていく、ひとりの人間を描いた、ずっとパーソナルな物語になっています。こうした、より小規模でパーソナルな物語は、今後のDCUやコミック映画に、どのような可能性をもたらすと思いますか?
私は、どちらのタイプの映画にも、それぞれの居場所があると思っています。ただ、個人的には、ひとりのキャラクターと、その人物自身の物語にじっくりと焦点を当てるというアイデアが大好きなんです。キャラクターを中心に据えた物語ですね。
私自身、おそらくそういった作品のほうが作りやすいですし、よりパーソナルなものに感じられるんです。登場人物の内面にも、もっと深く入り込むことができますからね。私が好きな映画にも、そういう作品がたくさんあります。ですから、そういった方向性には、とてもワクワクしています。

──本作のラストシーンには本当に圧倒されました。忘れられないです。ネタバレにならない範囲でお聞きしたいのですが、あの結末を通じて、どのようなことを表現したかったのでしょうか?
映画の結末というのは、本当に難しいものです。物語をきちんと、あるべき場所に着地させなければいけませんからね。
ただ、私があの結末で描きたかったのは、やはり人間が怪物へと変貌していく、その誕生の瞬間です。同時に、怪物の中に閉じ込められてしまった人間の姿も描きたかった。どれだけ怪物の姿になっても、その内側には常にひとりの人間が存在しているんです。
だからこそ、その人物が抱える悲しみや苦しみを、きちんと感じられるものにしたかった。つまり、そこには恐怖がありながら、同時に深い哀しみもある。私が表現しようとしたのは、その両方なんです。
映画『クレイフェイス』は2026年10月30日(金)全国公開。THE RIVER公式YouTubeチャンネルでは、主演のトム・リス・ハリスと共演のナオミ・アッキー、ジェームズ・ワトキンス監督への貴重なインタビュー動画を公開中だ。
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