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【ネタバレ解説】『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』の◯◯に見られる『女王陛下の007』オマージュ

『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』
© 2021 DANJAQ, LLC AND MGM. ALL RIGHTS RESERVED.

この記事には、『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』のネタバレが含まれています。かならず本編をご覧になってからお楽しみください。

『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』
© Danjaq, LLC and Metro-Goldwyn-Mayer Studios Inc..All Rights Reserved.

『女王陛下の007』は、初代ジェームズ・ボンド俳優ショーン・コネリーの後継に抜擢されたジョージ・レーゼンビーが主演を務めた1作。『ノー・タイム・トゥ・ダイ』にも登場する悪党、エルンスト・スタヴロ・ブロフェルドとボンドとの死闘が描かれた。

そんな『女王陛下の007』へのオマージュが捧げられたシーンとはいったい、『ノー・タイム・トゥ・ダイ』のいつ、どこで見られたのか。『女王陛下の007』を観ていた方であればピンと来たかもしれないが、それはエンドロールで訪れる。

2006年に始まったダニエル・ボンドの物語が完結し、エモーショナルな気分になっていたであろう観客の耳に聞こえてきたのは、サッチモの愛称で知られた伝説的ジャズミュージシャン、ルイ・アームストロングによる楽曲「愛はすべてを越えて(We have all the time in the world)」。実はこの曲、『女王陛下の007』の挿入歌なのだ。

『ノー・タイム・トゥ・ダイ』の封切りに先がけて、本編を鑑賞したジョージ・レーゼンビーがTwitterで投稿した感想を読んでいた方にとっては、謎が解けた瞬間でもあったはずだ。レーゼンビーは「音楽のチョイスが興味深かった」と述べていたが、その真意は定かでなかった。しかし、本編を鑑賞した後なら、「愛はすべてを越えて」のことを指していたということが分かる。

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ところで、「愛はすべてを越えて」を通して『女王陛下の007』を彷彿とさせるシーンが『ノー・タイム・トゥ・ダイ』で訪れるのは、エンドロールが最初ではない。本編序盤、海に面したイタリアの街マテーラをアストンマーチンで走るボンドとマドレーヌのシーンでも、「愛はすべてを越えて」のメロディが流れているのだ。そしてこのシーンは、『女王陛下の007』のラストシーンと不思議なほどに重なるところがある。

『女王陛下の007』の終盤、ブロフェルドとの死闘を通して愛を深め、結婚を決めたボンドとボンドガールのテレサ。MやQ、マネーペニーも駆けつけた結婚式で大いに祝福を受けた2人は、見晴らしの良い車道をドライブするのだが、この時ボンドは「世界は2人だけのものだ」、原語では「We have all the time in the world」とテレサに告げた。しかし、その直後、テレサは背後に迫っていたブロフェルドの復讐によって命を落としてしまう。

奇しくも、先述の『ノー・タイム・トゥ・ダイ』のドライブシーンでも、このセリフと全く同じ一言が登場する。ダニエル・クレイグ演じるボンドは、マドレーヌに「We have all the time in the world」と告げているのだ。字幕では「時間はいくらでもある」と訳されているが、原語では一語一句同じセリフである。そして終盤にもボンドは、マドレーヌとの会話で「You have all the time in the world」ともう一度同様の言葉を口にしている。

「We have all the time in the world」というセリフは、『ノー・タイム・トゥ・ダイ』から『女王陛下の007』へのオマージュとして意図的に重ねられたものだろう。しかし、その一言を言い放った2人のボンドの状況を比較してみると、そこに包含された意味は全く異なってくる。

その解釈こそ、観客一人ひとりに委ねられているが、『女王陛下の007』と『ノー・タイム・トゥ・ダイ』の両方に共通して確かに言えることが1つだけある。その後にいかなる悲劇が起ころうとも、2人のボンドはスパイではなく、1人の男として幸せな時間の中に生きていたということだ。

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SawadyYOSHINORI SAWADA

THE RIVER編集部。宇宙、アウトドア、ダンスと多趣味ですが、一番はやはり映画。 "Old is New"という言葉の表すような新鮮且つ謙虚な姿勢を心構えに物書きをしています。 宜しくお願い致します。ご連絡はsawada@riverch.jpまで。

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