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【解説】征服者カーン役ジョナサン・メジャース解雇、マーベル映画の影響は?考えられる「2つのシナリオ」とは

アントマン&ワスプ:クアントマニア
(c)Marvel Studios 2023

フェーズ1〜3のマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)では、すべて集めると強大な力を発揮するインフィニティ・ストーンをめぐる物語「インフィニティ・サーガ」が描かれた。各作品にインフィニティ・ストーンが散りばめられるように登場し、これを狙う帝王サノスが少しずつ出現。やがて『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』(2018)と『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019)で、サノスとのストーン争奪戦が本格化するという構図だった。

ジョナサン・メジャースが演じる征服者カーンは、フェーズ4〜6の「マルチバース・サーガ」で、サノスのような立ち位置の最重要ヴィランになるはずだった。つまり、各作品でマルチバース描写やカーンを少しずつ登場させ、クロスオーバー超大作『アベンジャーズ:ザ・カーン・ダイナスティ』(2026予定)と『アベンジャーズ:シークレット・ウォーズ』(2027予定)で、マルチバースをめぐるカーンとの頂上決戦に繋げる予定だったのだ。

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ここに来てメジャースが解雇となったことで、この壮大な計画が根本から狂ったことは誰の目にも明らかだ。今後マーベル・スタジオが取りうる道は、主にふたつ考えられる。

可能性1: 征服者カーン役をリキャストする

事情はどうあれ、MCU作品で役者が交代となることは決して珍しいことではない。例えばハルク/ブルース・バナー役はエドワード・ノートンからマーク・ラファロに、ジェームズ・“ローディ”・ローズ役はテレンス・ハワードからドン・チードルに変更されているし、サディアス・“サンダーボルト”・ロス役のウィリアム・ハートは没後にハリソン・フォードが引き継いでいる。

マーベル・スタジオやディズニーも、裁判の判決が出るまで全く何もしていなかったわけではなく、いくつかのバックアッププランを準備していたはずだ。実は、噂レベルではメジャースに変わってカーン役を引き継ぐかもしれないという役者の候補は挙がっており、ドラマ「スノーフォール」(2017)で評価されたダムソン・イドリスが注目されるのではないかとの説がある。イドリスは、『トップガン マーヴェリック』(2022)ジョセフ・コシンスキー監督とブラッド・ピットがタッグを組む注目のF1レース映画に出演することで更なるブレイクが期待されるひとりだ。

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もしもリキャストするのであれば、マーベル・スタジオのライターが“変異体”という特性をどう活かすかに注目したい。役者交代によってカーンの容姿も変わることになるわけだが、「変異体だから」ということで説明を貫くか。劇中では、すでにロキやピーター・パーカーの変異体がそれぞれ異なる容姿で登場しているのだから、役者変更も理にかなってはいる。

俳優の変更というメタ的な事情に物語で整合性をつけた近例としては、ワーナー・ブラザースの『ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密』(2022)で、グリンデルバルド役をジョニー・デップから引き継いだマッツ・ミケルセンがある。このケースでは、キャラクターは魔法によって容姿を変えられるという設定が活かされた。

可能性2:征服者カーンの取り扱いをやめる

メジャース解雇に伴って、もう征服者カーンを登場させないという可能性も十分ある。このキャラクターは、卓越した演技力の持ち主だったメジャースの見事な“演じ分け”によって成立していた部分も大きい。スタジオが後任役者を見つけられても、その実力に安心して任せられるかどうかは別問題だ。また、すでに複数作品に登場したキャラクターが突然配役変更になるというのもケチがついてしまう。

ロキ
(C)2021 Marvel

そこでスタジオには、カーンの登場を打ち切るという選択肢がある。物語上は、例えば時の管理者になったロキが一気に剪定してしまったとか、もしかしたらそういう事情をつけられるかもしれない。

ディズニーには、役者の解雇によってしれっと物語から退場させた近例がある。『スター・ウォーズ』のドラマ「マンダロリアン」で主要人物キャラ・デューンを演じていたジーナ・カラーノがSNSでの不適切発言によって解雇されると、シーズン3内では別の特殊部隊の一員として昇進し、どこかで忙しくしているという設定で片付けられた。

もしもカーンの取り扱いを終了させるのなら、2026年予定のクロスオーバー大作前編『アベンジャーズ:ザ・カーン・ダイナスティ』はタイトルごと変更になるだろう。実はThe Hollywood Reporterの情報によれば、すでにスタジオ内では『ザ・カーン・ダイナスティ』と呼ばれておらず、『アベンジャーズ5』の仮題に改められているという。

もともと『ザ・カーン・ダイナスティ』には一進一退の動きがあった。当初は『アントマン&ワスプ:クアントマニア』脚本家ジェフ・ラブネスが続投すると伝えられていたが、後に離脱しており、『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』(2022)や「ロキ」(2021-2022)のマイケル・ウォルドロンが加わっていた(この規模のハリウッド映画の脚本は、複数人のライターが手を加えることが多い)。

監督には『シャン・チー/テン・リングスの伝説』(2021)デスティン・ダニエル・クレットン監督が就任していたが、後にスケジュール都合で降板。現在、監督は不在の状況となっている。脚本がどこまで仕上がっていたかは不明だが、長く続いた今年のストライキでしばらく足止めをくらっていた部分も大きいはずだ。

カーン不在で「マルチバース・サーガ」を進めるとなると、むろん別のラスボス級ヴィランが必要になる。有力視されているのはドクター・ドゥームで、すでにスタジオ幹部らの間で検討が行われていたとの報道もある。このヴィランは原作コミックでもカーンと深く関係するキャラクターなので、ライターたちはなんとか落とし所を見つけられるかもしれない。

マーベル・スタジオは『ザ・カーン・ダイナスティ』を再延期することもできるだろう。2026年5月1日のUS公開まで約2年半。「まだ約2年半ある」と見るか、「もう約2年半しかない」と見るか。ともかくスタジオは対応に追われているはずだ。ただでさえ興行不振に悩まされるマーベル・スタジオ作品に、最新の頭痛の種が降ってかかる事態となった。

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Source:The Hollywood Reporter

Writer

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中谷 直登Naoto Nakatani

THE RIVER創設者。代表。運営から記事執筆・取材まで。数多くのハリウッドスターにインタビューを行なっています。お問い合わせは nakatani@riverch.jp まで。

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