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アトム・エゴヤン最新作『手紙は覚えている』はナチ復讐映画!妻の死すら忘れてしまう認知症の老人が復讐の旅へ

今年6月、元SS隊員でアウシュビッツ強制収容所の看守だったラインホルト・ハニング被告(94)に禁固5年の有罪判決が下された。罪状は「収容所における虐殺の扶助」である。昨年7月にも同じく元看守だったオスカー・グレーニング被告(94)に禁固4年の判決が下された。しかしながら両名共直接の殺人には関わっておらず、グレーニング被告は簿記係(犠牲者の財産をSS上層部に送金していた)に過ぎなかった。
戦後70年を過ぎたとはいえ、ドイツ国内の「負の遺産」を炙り出すナチスアレルギーは魔女狩りの様相を呈している。
 

アトム・エゴヤンの新作『手紙は覚えている』はかつてナチに家族を奪われた老人の復讐劇である。


妻の死すら忘れてしまう深刻な認知症を抱えた90歳のセヴ(クリストファー・プラマー)は妻の葬儀の日、同じ老人ホーム仲間のマックス(マーティン・ランドー)から一通の手紙を渡される。それによると二人がかつてアウシュビッツ強制収容所の生存者であり、互いに家族を収容所で虐殺されていたことが判明。家族を殺した看守は今なお生きていると。容疑者は4人、歩けないマックスに変わってセヴは復讐の旅に出るのであった・・・

かつて『スウィートヒアアフター』『秘密のかけら』でなにかと物議を醸したアトム・エゴヤン監督だが今作もその一本に入るだろう。
各国で大量生産されてきたナチ復讐映画だが、近年『イングロリアス・バスターズ』『アイアン・スカイ』で史実すら飛び越え、未だこのジャンルが秘める魔力の存在性を再確認するに至った。今年には『帰ってきたヒトラー』も公開され波紋を呼んだ。コメディかつ半ドキュメンタリー作品ではあったが現在ドイツが抱える社会問題とヒトラーという存在が同居し風化しない様に鳥肌が立った方も少なくないだろう。劇中ボケた頭と老体に鞭打ってナチを追い詰める名優クリストファー・プラマーの演技力には誰もが脱帽する。今作は現代版『ブラジルから来た少年』とも言える。

だが、主人公の追い詰める容疑者たちのキャストがブルーノ・ガンツ(ニコ動でお馴染み総統閣下)やユルゲン・プロウノフ(U・ボートの艦長役)はいささか偏執的パロディ過ぎる。また『アイデンティティー』『メメント』『エンゼル・ハート』まんまのどんでん返しもナチと言う凶暴な題材に対してあまりに陳腐かつ古臭いオチに筆者は思えてしまった。この点において今作の評価は二分されるだろう。

劇中3人目の容疑者の息子である保安官がネオナチなのだが、この映画で一番ゾッとさせられる場面だ。「負の遺産」は 滅んだ後も姿形を変え人々の心に今だ存在し続けているのである。決してファンタジーなどでなく。

10/28日(金)TOHOシネマズ系で全国公開

Writer

中谷 直登
中谷 直登Naoto Nakatani

THE RIVER編集長。ライター、メディアの運営や映画などのプロモーション企画を行っています。お問い合わせは nakatani@riverch.jp まで。

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