『オデュッセイア』IMAX 70mm、なぜ上映館を増やせないのか ─ 日本含むアジアに1館もナシ、IMAX社は拡大意向

クリストファー・ノーラン監督の最新作『オデュッセイア』は、劇映画としては史上初となる、全編をIMAXフィルムカメラで撮影した作品だ。しかし、その真価を本当に発揮できる映画館は世界でもごく一部に限られている。
「IMAXの素晴らしいところは、観客を没入させ、嵐や荒れる海、強風などを間近に感じさせられること。船上で、登場人物たちとともに海やポセイドンの怒りを恐れてほしい」。そう語るノーランが理想としている上映環境は、ずばりIMAX 70mmフィルムだ。
ところが、本作をその理想通りに上映できる劇場は世界でわずか41館だけで、日本を含むアジアには1館もない。国内で最も近い環境は、グランドシネマサンシャイン池袋と、109シネマズ大阪エキスポシティの2館が備えるIMAXレーザー/GTテクノロジーのみだ。

すでに世界の熱狂的なファンの間では、IMAX 70mm上映への需要が劇場数を大きく上回っている。本作を観るために海外へ渡航する者、公開後わずか3週間に18回分のチケットを購入した者。なんと、第2子の妊娠を数か月延期した者までいるというのだ。
なぜIMAX社は、この環境を世界中の映画館に増やせないのか。米Varietyの取材に対し、リチャード・ゲルフォンドCEOは「公開5週目まで完売している劇場もあり、確実に需要はあります」と認めつつ、「問題は、新しいIMAXフィルム映写機が約50年間作られていないこと」だと語った。
「私たちは既存の映写機を改修し、作り直しています。どこまで増やせるのかを見極めることも戦略のひとつ。需要を考えれば、もっと増やしたいと考えています。」
課題は多い。必要な部品の多くがすでに存在せず、映写機の完全な製造図面も失われ、システムの全体像を理解している者もほとんどいない。すなわち、“生産以前”の知識がなくなってしまったのだ。2000年代から安価で管理しやすいデジタル映写機への転換が進むにつれ、フィルム機材や部品の生産は減り、技術者の数も減った。
それでもIMAX社は、『オッペンハイマー』のヒットを受け、『オデュッセイア』のためIMAX 70mmフィルム映写機を増やすことを計画。壊れた映写機や放置された映写機を探し出し、まだ使える部品を回収すると、できるかぎり社内で機材を蘇らせ、さらに映写技師60人を一から養成した。これによって、『オデュッセイア』のIMAX 70mmフィルム上映館は、『オッペンハイマー』の世界30館から41館まで増えたのである。

「我々は日々、新しい映写機を作っています」とゲルフォンドCEOは言うが、物理的な問題は今も残っている。「世界にある約2000館のIMAXシアターすべてでフィルム上映はできない。それほど多くの映写機は残っていないのです」。
日本の映画館におけるIMAXシアターは、そもそもデジタルシアターを起点として普及が始まり、今でもIMAXレーザーが主流だ。新品のIMAX 70mmフィルム映写機を発注できないうえ、米国のように旧来のフィルム上映設備を修復・再生する基礎もほとんどない。また、巨大なスクリーンを収める劇場空間や専用設備、人材の確保など、クリアすべきハードルはまだまだ残っている。
もっともIMAX 70mmフィルム上映を求める作り手がいる以上、ゲルフォンドCEOが「(IMAX 70mm上映館を)今後も増やしていくことはできる」と述べているように、IMAX社はより多くの機材を世界の劇場に提供してゆく意向だ。追加のフィルム映写機を導入するため、新しい映写技術の検討を含め、あらゆる可能性を模索しているという。いつか日本でも、IMAX 70mmフィルム上映が叶う日がやってくるかもしれない。
映画『オデュッセイア』は2026年9月11日(金)全国公開。
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