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【特集】デイリー・ビューグル ─ マーベル世界最大のメディア、歴史と変遷を追う

デイリービューグル

「アメコミに登場するメディアを特集したら、面白いのではないか。」

アメコミの世界には、マーベルのデイリー・ビューグル、DCコミックのデイリー・プラネットをはじめとした新聞やメディアが象徴的に登場する。これらは、物語の中でスーパーヒーローらを時に支持し、時に糾弾する。スーパーヒーローのパブリック・イメージ形成にメディアが欠かせないことを示唆するように、主要なスーパーヒーロー自身がメディア関係者であることも少なくない。ピーター・パーカー(スパイダーマン)はデイリー・ビューグル紙でカメラマンを務め、クラーク・ケント(スーパーマン)はデイリー・プラネット紙で記者を、カーラ・ダンバース(スーパーガール)はキャットコー・メディアに勤務する。

アメコミ世界に登場するメディアは、“空想の世界の中で、真実を伝えようと真剣に働く、空想の存在”という、存在それ自体に矛盾を抱えたような面白さがある。筆者はいつだって、空想の中にこそ真の面白さや誠実さが隠されていると考えている。空想がなければ、オリオン座も天の川も意味をなさないし、ライト兄弟は空を飛ぼうと思わなかっただろう。世の中はいつだって空想が必要だ。空想の中で真実を伝えるデイリー・ビューグルやデイリー・プラネットは、そんな本質の象徴であるように思う。

『バットマンvsスーパーマン ジャスティスの誕生』(2016)で、クラーク・ケントは「新聞が世論をつくる」と訴えた。報道やメディアに関連するすべての人々を勇気づける場面だ。そんな「空想のメディア」に敬意を評し、様々な空想上のメディアを特集してみようと本稿の執筆に取り掛かったが、思わず熱くなってしまい、最初のデイリー・ビューグル一社でそれなりの文字数に膨れ上がってしまった。デイリー・プラネットなど他のメディアのご紹介はまたの機会に改めるとし、今回は映画『スパイダーマン』シリーズでもよく知られる、デイリー・ビューグルの特集をお届けしよう。

デイリー・ビューグル

Marvel
Marvel

デイリー・ビューグルは、マーベル・コミックの世界に登場するニューヨークのタブロイド紙だ。コミックに初登場したのは1962年、”Fantastic Four #2″まで遡る。”ニューヨーク・デイリー・ニュース”と”ニューヨーク・ポスト”の実在の二紙がモデルになっているという。設立は1898年とされ、それ以来毎日ニューヨークの日常と事件を市民に伝え続けている。

J・ジョナ・ジェイムソンの半生

後に編集長、さらに同社オーナーとなるJ・ジョナ・ジェイムソンは、高校時代に写真クラブに在籍した後、デイリー・ビューグルに採用。初代ヒューマン・トーチ(ジム・ハモンド)やネイモアを偶然目撃すると、すぐにスーパーパワーを持つ人物が法外に存在するという事実に疑問と危機を抱く。映画『シビル・ウォー:キャプテン・アメリカ』(2016)や『バットマンvsスーパーマン ジャスティスの誕生』(2016、DC映画)でも描かれていた「スーパーヒーローの危険性」に、早くから気づいていたのである。

アメリカが第二次世界大戦に参戦すると、ジェイムソンはヨーロッパ特派員として従事。ニック・フューリー率いる「ハウイング・コマンド」の一員として活躍した。戦後、韓国への出張取材で不在にしている間、強盗に遭い妻ジョアンを殺害される。

ジェイムソンとジョアンは、高校時代、写真クラブで出会い、卒業後すぐに結婚した。学校の体育会系の生徒3人にいじめられたジェイムソンは毅然と立ち向かい、3人を叩きのめした。その男らしさに、ジョアンは惚れたのだった。

妻を失った悲しみを克服すべく、ジェイムソンは仕事に打ち込んだ。その努力は、やがて自身を編集長の地位まで叩き上げた。「俺は将来、自分の新聞を持つんだ。」ジェイムソンは入社当初、同僚らにこう吹聴していたという。この夢は、彼自身の弛まぬ努力によって叶えられた。しかし、その頑固なまでのストイックさは、敵を生むこともあった。スーパーヒーローの存在に懐疑的だったジェイムソンは、スパイダーマンを徹底的に糾弾する姿勢を取り、「親愛なる隣人」を、悪趣味なスパンデックスを穿いた危険な狂人として追い込んだのである。

ごめん、スパイディ

デイリー・ビューグルは、スパイダーマンのネガティブ・キャンペーンに躍起だった。『スパイダーマン3』(2007)では、スパイダーマンが強盗を働く現場をとらえた写真を報じたが、ピーター・パーカーによって捏造であることを見破られる。同社はこの写真を納品したエディ・ブロックを追放処分としたことを実名・顔写真付きで報じると共に、同社の歴史上初となる謝罪記事を掲載した。

Writer

中谷 直登
中谷 直登Naoto Nakatani

THE RIVER創設者。代表。運営から記事執筆・取材まで。数多くのハリウッドスターにインタビューを行なっています。お問い合わせは nakatani@riverch.jp まで。

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