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【レビュー】ロッキー映画『I Play Rocky』 ─ 若きスタローンの熱血物語にスタンディングオベーション

I Play Rockey
Courtesy of TIFF.

ハリウッドの大御所として、これまで数々のアクション映画で活躍してきたシルヴェスター・スタローン。そんな彼にも、何度もオーディションに落ち、演技を笑われていた若き時代があった。オーディションでは、周囲から独特な話し方を揶揄われる。そんなシーンから始まる『I Play Rocky(原題)』は、スタローンが『ロッキー』を書き上げ、ハリウッドで成功をつかむまでを描く。

『グリーンブック』などで知られるピーター・ファレリーが監督を務める本作。第51回トロント国際映画祭でワールドプレミアを迎えると、上映後にはスタンディングオベーションが起こり、大きな歓声に包まれた。観客の反応も良く、今後の観客賞レースや賞レースでの行方にも注目が集まっている。

物語の冒頭で描かれるスタローンは、現在の姿からは想像もつかないほど厳しい生活を送っている。シルヴェスターではなく「マイク」と名乗り、路上で寝泊まりし、拾った犬と一緒に過ごす。コンビニに入っても、好きなものを自由に買うことさえできない。それでも、俳優になる夢だけは絶対に諦めなかった。そんな彼が、ある日バーで目にしたのが、モハメド・アリとチャック・ウェプナーの一戦だ。この試合をきっかけに、スタローンは『ロッキー』の脚本執筆へと突き進んでいく。

スタローンの姿を見ていると、「夢を追い続ける」という言葉が、いかにきれいごとではないのかが伝わってくる。誰にも評価されず、生活にも余裕がなく、「もう諦めたほうがいい」と言われるような状況でも、彼は書くことをやめない。脚本を書いているスタローンが、手を氷で冷やす場面もある。書き続けることで手が痛くなっても、それでも書く。そうして恋人の力も借りながら、『ロッキー』をついに書き上げる。

I Play Rockey
Courtesy of TIFF.

そんなスタローンのもとに、脚本を欲しがる大手プロダクションから声がかかる。当然、生活に困っていた彼にとって、高額な報酬は魅力的だったはずだ。しかし、彼には絶対に譲れないものがあった。「自分がロッキーを演じる」ということだ。それが、本作のタイトルにもなっている“I Play Rocky”という言葉につながっていく。高額なオファーを断るその頑固さは、無謀にも見えてしまう。それでも、本作を観ていると、その頑固さこそが今のスタローンの土台になっていることがわかる。

本作には、もちろん『ロッキー』の撮影裏も描かれている。筆者が驚いたのは、スタローン自身にボクシング経験がなかったことだ。そんな彼がロッキーを演じるため、徹底的に役作りに打ち込んでいく。過酷なトレーニングに身を投じ、身体を作り上げていく姿からも、彼の「やると決めたら、とことんやる」という性格が伝わってくる。

そして、本作で一番注目したいのが、若きスタローンを演じる俳優アンソニー・イッポリト。見た目や独特の話し方を再現するだけではなく、まだスターになる前の“どこか未完成な”スタローンを見事に演じ切っている。特に印象的なのは、スタローンが「自信満々な未来のスター」として描かれていないことだ。大手プロダクションとの交渉をさっそく真似してみせるなど、スタローンのちょっと不器用で、どこか可愛らしい一面も描かれており、客席からは笑いが起こっていた。

『I Play Rocky』を観終わって、筆者が一番強く感じたのは、スタローンの「諦めない力」だった。周りがどう言おうと、自分が信じたものに尋常ではないほど没頭する力がある。手が痛くなるまで脚本を書く。自分が演じることにこだわる。経験のないボクシングのトレーニングに打ち込む。そして、映画を完成させるために、また次の壁に立ち向かう。いい意味で、頑固なのだ。そして、その頑固さが、結果的には誰にも真似できない道を切り開いていく。『ロッキー』が「どんなに不利な状況でも、最後まで立ち続ける男」の物語だったとしたら、その映画を作ったスタローン自身もまた、現実の世界で同じことをしていた。

映画が始まったときには、ただの「売れない俳優」に見えていたスタローンが、過酷な時期を経て「ロッキー」になっていく。その過程を見届けたあと、あの有名なテーマ曲が流れる瞬間、きっとガッツポーズがしたくなるはずだ。

映画『I Play Rocky(原題)』の日本公開情報は不明。

Writer

Ayaka SaitoAyaka Saito

カナダ・トロント在住の映画レポーター/コラムニスト。北米で感じ取れる「ポップカルチャーへの熱」をお届けします。好きなジャンル:ホラー、好きなヒーロー:DCブルービートル。

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