『バベル』から20年、イニャリトゥ監督「これほど人々が話し、人の話を聞かない時代はない」 ─ 『DIGGER/ディガー』で描いた現実の分断【独自】

「世界の歴史上、これほどまでに人々がたくさん話し、これほどまでに人の話を聞かなかった時代はないと思います」。映画『バベル』(2006)から20年。アレハンドロ・G・イニャリトゥ監督がTHE RIVERの単独インタビューで、SNS時代における言葉のあり方と、最新作『DIGGER/ディガー』に込めた思いを語った。
2006年に発表された『バベル』は、モロッコ、メキシコ、アメリカ、日本を舞台に、言葉も文化も異なる人々の運命が交錯する群像劇。日本からは役所広司と菊地凛子らが出演し、実際に日本でも撮影が行われた。言葉が通じないことによるすれ違いや、それでもつながっていく人々の姿を描いた作品だ。
それから20年を経て、イニャリトゥ監督はトム・クルーズ主演の新作『DIGGER/ディガー』を完成させた。クルーズ演じる傲慢な大富豪ディガー・ロックウェルが、自ら招いた地球滅亡の危機から世界を救おうとする、ブラックユーモアに満ちた風刺劇だ。
実は『DIGGER/ディガー』、当初は『Blah, Blah, Blah』というタイトルになる可能性があった。日本語の「うんたらかんたら」などにあたる言葉。延々と続く(取るに足らない)おしゃべりや、あれこれと並べ立てられる言葉を表す表現だ。
言葉は人と人をつなぐ一方で、時には恐るべき武器にもなる、と監督は別のインタビューで語っていた。『バベル』から20年が経った今、監督の言語に対する考え方に変化はあったのだろうか? 来日したイニャリトゥ監督に尋ねると、かつての日本での撮影を懐かしみながら、こう語った。

「『バベル』を作って、ここ日本でも撮影してから、もう20年になるんですね。ちょうど今ごろの時期に、菊地凛子さんや役所広司さんたちと撮影していました。
当時の世界は、まるで別の惑星でした……。今のようなソーシャルメディアは、まだ存在していなかった。」
『バベル』では、互いに出会うことも、直接触れ合うこともない人々が、知らず知らずのうちに相手の人生に影響を与えていた。ところが今や、世界中の誰もがインターネットやSNSを通じて簡単につながることができる。その変化を、監督は必ずしも肯定的には捉えていない。
「でも今、私たちはつながっている。言語を通して、言葉を通して、“blah blah blah”を通してね。ところが、その“blah blah blah”の音量と量があまりにも大きくなってしまった。
世界の歴史上、これほどまでに人々がたくさん話し、これほどまでに人の話を聞かなかった時代はないと思います。これほどまでにつながっているのに、同時にこれほど孤立し、分断されている時代もなかった。それは、言葉があまりにも多すぎるからです。
だから私は、この映画を『Blah Blah Blah』と呼びたかった。」
20年前の『バベル』が、言葉が通じない人々のつながりを描いたのに対し、『DIGGER/ディガー』が掘るのは、言葉があふれかえることで、かえって人々が分断されていく現代社会だ。
監督によれば、劇中のディガーが持つ武器もまた、言葉によって作り出される「ナラティブ(語り)」や「ストーリーテリング(物語を語ること)」なのだという。「それによって私たちは現実の世界から遠ざけられ、もはや筋が通らないようなことまで信じるようになる」。
人々は同じ世界で暮らしていても、必ずしも同じ現実を見ているわけではない。SNSのアルゴリズムによって、それぞれが自分にとって都合のよい情報に囲まれるようになった現代。その状況を、監督はこんな言葉で表現した。
「私たちは、それぞれ異なる現実の中で生きています。あなたのスマートフォンは、あなたが心地よく感じる“現実”をあなたに与えている。私の現実はあなたの現実とは違う。同じ空間に一緒にいるのに、です。
それは恐ろしいことです。そして、それこそがこの映画の描いていることだと思います。」
言葉が通じない世界から、言葉が多すぎる世界へ。『バベル』から20年を経て、イニャリトゥ監督が新たに描くのは、つながっているはずなのに分かり合えない現代人の風刺だ。
映画『DIGGER/ディガー』は全国公開中。THE RIVER公式YouTubeチャンネルでは、アレハンドロ・G・イニャリトゥ監督へ行った、ここだけでしか見ることのできない貴重な単独インタビューフル動画を公開中だ。
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