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【ネタバレ解説】『DUNE/デューン』の「救世主伝説」とは ─ パート2で鍵を握るフレメンたち、青い瞳の赤ん坊の正体

DUNE/デューン 砂の惑星
©2021 Legendary and Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved

この記事には、『DUNE/デューン 砂の惑星』のネタバレが含まれています。

 DUNE/デューン 砂の惑星
©2020 Legendary and Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved

本記事で記す内容は主に、アトレイデス家が砂の惑星アラキスに移住した後のストーリーライン。このアラキスには、ポールに課せられた運命を理解する上で大切なことが多く存在する。舞台がアラキスに移ってから次々と登場した専門用語や、フレメンたちの言動に頭をかしげた方もきっといるはず。こうした疑問を紐解くにあたり、先住民フレメンたちの間で言い伝えられている「救世主伝説」が重要になってくる。

水不足による死と常に隣り合わせの状況にあるフレメンたちは、体外に排出された水分をリサイクルできるスティル(保水)スーツなどを利用し、環境に適応していた。しかし、彼らもそのような過酷な生活を望んでいるわけではない。そんなフレメンたちの間には、いつの日か外の世界から救世主が現れ、アラキスを緑の惑星へと変えてくれるという迷信が存在する。これが「救世主伝説」の概略である。

 DUNE/デューン 砂の惑星
©2020 Legendary and Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved

劇中のフレメンたちは、その救世主を「マフディー」と呼んでいた。このほか、「リサーン=アル・ガイブ」という呼び名も登場したが、いずれも「外界からの預言者」といった意味である。しかし、フレメンの全員がこの迷信を信じているというわけではない。例えば劇中終盤、ポールに死の決闘を申し出たフレメンの一人ジャミス(バブス・オルサンモクン)は、救世主の存在に懐疑的だったからこそ、あのような行動に出た。

この信仰に揺らぎを生じさせたのが、アトレイデス家が統治を任される前にアラキスを治めていたハルコンネン家だった。彼らは、アラキスでしか産出されない香料メランジを占有し、巨万の富を築き上げた。その裏で暴政を敷いてもいたハルコンネン家は、フレメンたちにとって救世主どころか侵略者のようなもの。そんな彼らの後任として新たにアラキスにやってきたのが、アトレイデス家なのだ。

そして劇中でも描かれていたように、フレメンたちから救世主として視線を注がれていたのは、レト公爵ではなく息子のポールだった。年齢的にはまだ高校生ほどのポールだが、劇中では早くも救世主として覚醒する瞬間が描かれている。フラッシュバック風のカットで表現されたポールの予知描写だ。

覚醒の瞬間が見られたのは、ハルコンネン家による誘拐から逃れたポールとレディ・ジェシカが砂漠で休息を取っていたシーンにて。砂粒に混じるメランジに触れたポールは、次の瞬間に赤ん坊を抱いたレディ・ジェシカの姿を透視。これを引き起こしたものこそ、意識の拡張によって予知能力を促すメランジだったのだ。

 DUNE/デューン 砂の惑星
©2020 Legendary and Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved

ここで気になるのは、ポールの透視によって映った赤ん坊がなぜ青い瞳をしていたのか。これに複雑な仕組みはない。青い瞳は、一定期間メランジを摂取した者に生じる副反応のようなもの。赤ん坊のほか、ポールが予知した光景のなかには、戦闘スーツに身を包んで戦う自分自身の姿もあった。その時のポールの瞳も青かったが、これもメランジによるものだ。

もう1つの疑問は、ポールが予知で見た赤ん坊の正体。答えを言ってしまうと、アリアと名付けられることになるポールの妹だ。青い瞳をしていたのは、母親のレディ・ジェシカがメランジを摂取していたことで、子宮の中から間接的に香料に触れていたため。ここからはパート2で描かれることになるだろうが、アリアの場合は単に瞳が青いだけでなく、生まれつき予知能力も備えている。そして、将来的にはアトレイデス家の復興に重要な役割を担ってくることになる。

2021年8月時点で、ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督はパート2の脚本作業にあたっていることを明かしていた。まさに今、フレメンの仲間入りを果たしたポールたちの暮らしぶりや、ハルコンネン家への反撃の物語が構築されている途中にあるのだろう。その続編では、上述の「救世主伝説」とそれを信じるフレメンたち、これから生まれてくる赤ん坊(=アリア)が鍵を握ってくることは間違いない。

『DUNE/デューン』では、事の顛末を把握しきれずに劇場を後にした観客も多いはず。そうした方は、本記事で得た予備知識をもって『DUNE/デューン』に再チャレンジしてほしい。

『DUNE/デューン 砂の惑星』は公開中。

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SawadyYOSHINORI SAWADA

THE RIVER編集部。宇宙、アウトドア、ダンスと多趣味ですが、一番はやはり映画。 "Old is New"という言葉の表すような新鮮且つ謙虚な姿勢を心構えに物書きをしています。 宜しくお願い致します。ご連絡はsawada@riverch.jpまで。