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【ネタバレ考察】『エターナルズ』MCUにおけるDCヒーローの存在とは

エターナルズ
(c)Marvel Studios 2021

この記事には、『エターナルズ』のネタバレが含まれています。

エターナルズ
(c)Marvel Studios 2021

『エターナルズ』バットマンとスーパーマンへの言及

『エターナルズ』は、ちょっと衝撃的だ。マーベル・スタジオの作品でありながら、禁断(?)の「DCネタ」が2度も登場するのである。アメコミ映画ファンは大笑いするところだ。

まずは、セルシやイカリス、スプライトとキンゴたちが、セナ(アンジェリーナ・ジョリー)とギルガメッシュ(マ・ドンソク)を尋ねるシーン。キンゴの付き人を見たギルガメッシュが、「バットマンのアルフレッドみたい」とジョークを言うのだ。

そしてファストス(ブライアン・タイリー・ヘンリー)の自宅を訪れる場面では、ファストスの息子がイカリスを見て「スーパーマンだ」と言う。「マントをつけて、目からビームを撃つんだ」とはしゃぐ子どもに、イカリスは「マントはつけない」と返すのだ。さらにファストスは、「クラークと呼ぼうか?」とイジり続ける。クラークとは言わずもがな、スーパーマンの地球での名クラーク・ケントのことだ。

MCU映画の中で、ライバルとも言えるDCのネタが登場するのは異例だ。マーベル・スタジオの粋なジョークとしての面白さもあるが、劇中設定を考えると興味深い点がある。MCUの世界にも、DCコミックは存在するということだ。

そもそもMCUの世界にとって、ヒーローといえばアベンジャーズのはずである。人々は、アイアンマンやキャプテン・アメリカ、ソーにハルクといったヒーローたちのコスプレを楽しんでおり、ATM強盗をする時だって、アベンジャーズのお面をかぶる。トレーディングカードを集めるおじさんもいる。

そんな世界にDCヒーローの存在があるというのは、考えてみれば不思議だ。あの世界にはヒーローたちが実在するのだから、フィクションのヒーローが果たしてどれほどの人気を持つのだろうか。

『エターナルズ』劇中では、10歳前後と見られるファストスの息子がイカリスを見るや否や、「スーパーマンだ!」と直感的に反応している。MCU世界の人々であれば、イカリスの姿を見てヴィジョンを思い出してもよかったはずだ。にも関わらずファストスの子がスーパーマンへ言及したということは、アベンジャーズの登場以降もDCヒーローの人気は衰えず、今なお子どもたちにお馴染みであるということを示している。

監督のクロエ・ジャオはMCU作品内でDCヒーローに言及するにあたって、「責任」を負ったと米Comicbook.comに話している。「私たちは神話を語るという仕事をしていますから。例えばスーパーマンも神話に由来すると思います」というジャオ監督は、「スーパーマンやバットマンが好きじゃない人なんていませんよね。エターナルズだって彼らが好きなんですよ」と説明している。

DCヒーローへの言及描写は、もちろんマーベル・スタジオ社長ケヴィン・ファイギも承認済み。「ページを書いてケヴィンに見せて、何も言われないということは、オッケーということです」とジャオ監督は米Varietyに語る。「話し合いも特になかったと思いますよ。“いいんじゃないか”くらいで」。

何千年も地球に隠れて暮らしてきた不死身のヒーローたちを描くにあたって、彼らをDCヒーローのようなポップカルチャーも楽しむ存在として描くというのは、ジャオ監督らしい人間臭い演出だ。監督曰く、マ・ドンソクが演じたギルガメッシュは「バットマンを観ている」という。「だから誰かの付き人を見た時、彼は“あれじゃん!”と反応したんです。私たち同様、彼もバットマンが好きなんですよ」。

気になるのは、MCU世界でDC作品がどのような扱いになっているのかということ。ギルガメッシュたちも、『ダークナイト』3部作といった名作を楽しんでいたのだろうか。我々の現実世界では『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』と『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』が同じ年(2016)に公開されたが、彼らもアイアンマンとキャプテン・アメリカの対立を見て「『バットマン vs スーパーマン』みたいだね」なんて世間話をしたのだろうか。

もしもMCU世界でもDC映画が我々と同じように展開されているのなら、S.W.O.R.D.のジミーはあまり熱心に観ない方が良いかもしれない。『アクアマン』(2018)で、自分そっくりの男を見つけてショックを受けるかもしれないからだ。

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Source:Comicbook.com,Variety

Writer

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中谷 直登Naoto Nakatani

THE RIVER創設者。代表。運営から記事執筆・取材まで。数多くのハリウッドスターにインタビューを行なっています。お問い合わせは nakatani@riverch.jp まで。