『DIGGER/ディガー』は「マトリョーシカ構造」と監督 ─ 「物語は常に観客の先を進む」「観客を共犯者にしたい」【独自】
トム・クルーズ主演の映画『DIGGER/ディガー』は、おそらく近年の中でも特に“予告編だけでは何もわからない”映画の一本だ。本編を鑑賞すれば、真の驚きが隠されているのだが……。この不思議な構造について、筆者は来日したアレハンドロ・G・イニャリトゥ監督に尋ねてみた。
公開された予告編では、でっぷりと太った姿で大富豪ディガー・ロックウェルに扮するクルーズが、世界を救うために奔走する様子が描かれている。事前に明かされている物語は、あくまでもこの表層的な部分にとどまる。実際に鑑賞すると、それまで観てきたものの意味が大きく変わってしまうような、驚きの仕掛けが待ち受けているのだ。
「この映画は、ある意味ではマトリョーシカ、人形の中からまた人形が出てくるような構造で動いています」とイニャリトゥ監督は説明する。
「ストーリーテラーとして常に考えるのは、どこから物語を始め、どこで終えるのか。そして、その間でどの情報をいつまで伏せておくのか、ということです。それによって観客を楽しませ、ドラマチックな緊張感を作っていく。」
マトリョーシカといえば、人形を開けると、その中からまた別の人形が現れるロシアの民芸品。『DIGGER/ディガー』もまた、ひとつの物語を追いかけているつもりが、その内側から別の物語が姿を現すような構造になっているというわけだ。

監督によれば、こうした語り口は単なるサプライズのためではなく、作品そのものに欠かせないものだったという。「この映画は、どうしてもこのような語り方でなければならなかったと思います」と強調する。
「物語は常に、少しだけ観客の先を進んでいる。そして観客はそれを追いながら、少しずつ発見していく。」
そして監督は、本作のストーリーテリングに込めた、ある狙いを明かした。
「私は観客を“共犯者”にしたかったんです。観客自身にストーリーテリングへ深く参加してもらい、登場人物たちと一緒に旅をしてもらいたかった。そういう、発見していく旅なんです。」
観客はただ物語を見せられるだけでなく、何が起きているのかを自ら探り、発見しながら映画に参加していく。そんな体験を成立させるためにも、「この映画については、事前に読む情報が少なければ少ないほど、より楽しめると思います」と呼びかける。
イニャリトゥ監督は別の質問でも、映画を観る前に他人の評判や感想に左右される風潮に言及し、「まずは自分自身で体験しなければいけない」と語っている。
予告編だけを観て、あるいは他人のレビューや映画評だけを観て、本作がどういう映画なのかを分かったつもりになるのは、あまりにも早計だ。なぜなら、マトリョーシカ人形の外側だけを見て、その中に何が、いくつ収まっているのかを知ることは、誰にとっても不可能だからである。
映画『DIGGER/ディガー』は全国公開中。THE RIVER公式YouTubeチャンネルでは、アレハンドロ・G・イニャリトゥ監督へ行った、ここだけでしか見ることのできない貴重な単独インタビューフル動画を公開中だ。
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