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『ナイブズ・アウト:グラス・オニオン』破壊者のセリフは『スター・ウォーズ』ファンへのライアン・ジョンソン監督からのメッセージなのか?

ナイブズ・アウト:グラスオニオン
Netflix映画『ナイブズ・アウト:グラス・オニオン』2022年12月23日(金)より独占配信

『ナイブズ・アウト/グラス・オニオン』の内容が含まれます。

ナイブズ・アウト:グラスオニオン
Netflix映画『ナイブズ・アウト:グラス・オニオン』2022年12月23日(金)より独占配信

マイルズはこのシーンで、パーティーに招かれた参加者らは皆それぞれの分野で「破壊」を行った功労者であることを説明する。いわく、物事は「人々が飽き飽きしているものから」変えるべきであり、皆が壊したがったものを壊すのだから、世間からは歓迎される。それは覚悟を要するものであり、「誰も壊して欲しくないものを壊す勇気はあるのか」との自問自答が生じるという。「なぜなら、そこからは誰も味方してくれない。頭がおかしいと言われる。ただの乱暴者だと。そして止められる」。

マイルズは、システム自体を壊したがるものは誰もいないが、それを壊してこそ「真の破壊者」なのだといい、自分たちは「一線を超えた」者の集まりだと結論づける。どこか、『最後のジェダイ』を否定するファンに対する、ライアン・ジョンソン監督の擁護論のようだ。

もしかしたらジョンソン監督は、自身が『スター・ウォーズ』で行った試みのことを、キャラクターに代弁させているのかもしれない。マイルズ含めた本作のキャラクターは破天荒な曲者揃いなので、「真の破壊」とは何たるかを説明することは、それなりの必要性を帯びている。しかし、たっぷり尺を取ってクローズアップで丁寧に撮られたエドワード・ノートンの語りには、どこか言外の熱があるような印象を受ける。

ジョンソン監督は以前、「『スター・ウォーズ』を神話から外してアプローチすることは、誰にも出来なかった」と語っている。『グラス・オニオン』マイルズのセリフを重ねてみると、『スター・ウォーズ』のシステムを(再構築するために)破壊することが重要だったのだ、とのジョンソン流の哲学が見え隠れする。

ジョンソン監督はどちらかというと多弁な人物であり、劇中のキャラクターに自身の考えを代弁させることもある。『最後のジェダイ』は明らかに『スター・ウォーズ』サーガでの新旧交代劇を試みたような作品だが、カイロ・レンに「過去を葬れ」とのセリフを与え、結果的に「葬ることができる/できない」の二律背反を描いた。

『スター・ウォーズ』のような長寿シリーズを真の意味で再構築するためには、たとえ「頭がおかしい」と言われようとも、躊躇わずに思い切り踏み込むしかない。少し深読みが過ぎるかもしれないが、マイルズのセリフから、ジョンソンの覚悟の意図が込められていたように感じてならない。

Writer

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中谷 直登Naoto Nakatani

THE RIVER創設者。代表。運営から記事執筆・取材まで。数多くのハリウッドスターにインタビューを行なっています。お問い合わせは nakatani@riverch.jp まで。