『バックルームズ』監督来日ロングインタビュー ─ 「従来のハリウッドは、以前ほど広い層に語りかけられなくなっている」
映画『バックルームズ』が、全米興行ランキング1位を獲得し、A24史上最高興収を記録する大ヒットとなった。その監督を務めたケイン・パーソンズは、現在わずか21歳。16歳でYouTubeに『Backrooms』の短編シリーズを投稿し始めた若きクリエイターが、わずか数年で世界的ヒット映画の監督へと駆け上がった。
しかし、本人に話を聞いてみると、その人物像は「若き映画オタクの天才監督」という単純なものではない。映画を観まくるシネフィルというわけではなく、物心ついた頃からひたすら動画やVFXを作り続けてきた。建築や家具、人間が空間から受ける心理的な影響に強く惹かれ、ひとつの部屋とそこに暮らす人間の関係を子どもの頃から考えていたという。
THE RIVERでは、初来日を果たしたパーソンズ監督に単独インタビューを実施。『Backrooms』を長編映画へと発展させるうえで守ろうとしたもの、YouTube時代の制作スタイル、映画館への思い、好きな日本作品、1990年代へのノスタルジー、そして創作の根底にある「空間」への並々ならぬ執着まで、じっくりと話を聞いた。
『バックルームズ』ケイン・パーソンズ監督 単独インタビュー
──はじめまして。東京へようこそ!日本に来るのは今回が初めてですか?
そうです。初めてです。昨夜着いたばかりで。
──今回の日本滞在で、個人的にやってみたいことはありますか?
あまり時間はないと思います。かなりスケジュールが詰まっているので。でも僕は、街を歩くだけでもすごくいろんなものを得られるんです。
単に「建築を見るのが好き」と言ってしまうと安っぽく聞こえるかもしれないけれど、たとえばこの部屋にある設備なんかも、まさに僕が観察して、あとでモデリングしたり作品に取り入れたりしたくなるようなものです。
滞在中にはすごく面白そうなミーティングもいくつかありますし、とにかくこの場所の空気を吸収したいですね。
──街を歩いてみるだけでも面白いですよね。
そうですね。結局それだと思います。とにかくいろいろ見て、自分の好奇心が何に反応するのかを確かめたいです。
──これはもう何度も聞かれている質問だと思いますが、あなたは全米興行収入1位を獲得した最年少監督になりました。この映画がこれほど大きな成功を収めると想像していましたか?
いや、まったく。こんなことになるなんて、考えたことすらありませんでした。
僕は、ほかの映画監督たちと同じような形で映画業界を追っているわけではないんです。だから、この作品が興行的にどれくらいの成績を出すのか、そもそもどれくらいの数字を出せる可能性があるのかについて、特に期待を持っていませんでした。
とにかく作品そのものと、クリエイティブな作業に夢中だったんです。もちろん、『Backrooms』にはオンライン上に大きな観客がいることは知っていました。僕自身の解釈した『Backrooms』だけでなく、『Backrooms』というもの全体に大きなファンベースがあります。だから、それなりに成功するだろうとは思っていました。少なくとも、まったく人が観に来ないようなことにはならないだろうと。
でも、それがここまで拡大して、本当の意味でメインストリームに入り込むとは思いませんでした。A24史上最高興収の作品になったり、ボックスオフィス1位になったり……そういうことが、自分で状況を理解する間もないくらい次々に起きていったんです。
──『Backrooms』というアイデアは、インターネット上の非常に多くの人々によって形作られてきました。それを映画にするにあたって、プレッシャーや責任は感じましたか?
もちろん、きちんと作品にするというプレッシャーはありました。ただ、その頃にはある意味、そのプレッシャーをすでに自分の中に取り込めていたんだと思います。僕はもう何年も『Backrooms』の短編を作り続けていて、公開するたびにオンライン上のみんなから評価されてきたわけですから。
すでにそういう流れの中にいましたし、自分の観客が何に反応するのか、自分自身がクリエイティブに何に反応するのかもわかっていました。だから、このプロジェクトがどういうものであるべきか、何をしなければいけないのかについては、自分なりに理解できているという自信がありました。
一方で、「どこまで自分のやりたいことが許されるんだろう」という不安はありました。僕がそれまでいた世界には存在しなかった、より大きな映画業界の常識や慣習がありますから。
ビデオゲームの映画化や、『Backrooms』のような題材を扱ったプロジェクトが、スタジオやブランド、製作チーム、脚本によって十分なケアを受けられず、ファンが求めていたものとは全然違う作品になってしまう例を、何度も目にしてきました。
だから『Backrooms』では、そうならないようにすること、本来のアイデアに忠実であり続けることに、かなり意識を集中させていました。ストレスもあったと思います。でも、最終的にたどり着いたところについては、僕自身かなり満足しています。
──YouTubeシリーズでは、基本的にカメラを通して『Backrooms』という空間そのものを体験する形式でした。一方、映画ではクラークやメアリーのようなキャラクターに、より焦点が当てられていますね。なぜキャラクターを掘り下げたいと思ったのでしょうか?























