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『バックルームズ』監督来日ロングインタビュー ─ 「従来のハリウッドは、以前ほど広い層に語りかけられなくなっている」

『バックルームズ』ケイン・パーソンズ監督

──YouTubeシリーズでは、基本的にカメラを通して『Backrooms』という空間そのものを体験する形式でした。一方、映画ではクラークやメアリーのようなキャラクターに、より焦点が当てられていますね。なぜキャラクターを掘り下げたいと思ったのでしょうか?

僕が『Backrooms』を始めたのは16歳の時でした。当時は使えるリソースが限られていたので、そもそも大規模なプロダクションをやろうなんて考えていなかったんです。ある意味、偶然あの形になりました。

僕はBlenderという3Dソフトを使えましたが、CGの人間をアニメーションさせるのはすごく難しい。ただし、防護服みたいなものを着せれば別です。

だから人間を出すなら防護服を着せるか、あるいはカメラの後ろに置く。リアルに見える3Dの空間を作ること自体はそれほど難しくなくても、人間をリアルに見せるのはずっと難しいからです。その結果、ファウンド・フッテージ形式になったわけです。

そもそも僕が短編を作る以前の『Backrooms』というアイデア自体、人が誰も写っていない何枚かの画像の集合体でした。人々が惹かれていた中心的な感覚は、すごく個人的なもので、空間そのもの、コンセプトそのものに意識が向けられていたんです。YouTube作品にも、その感覚が一貫して流れていました。映画にも多少は残っています。

でも、オンライン上でそのコンセプトを十分に築き上げたら、いつかはきちんとひとり、あるいは数人のキャラクターと一緒に中へ入って、『Backrooms』への入口そのものをひっくり返すようなことをやりたいと、ずっと思っていました。

何年も『Backrooms』に親しんできた人なら、物語がどこへ向かうのか、ある程度わかっているかもしれません。でも、別のキャラクターの体験を通して描けば、新鮮な目でもう一度そのアイデアを経験することができる。

その人物に感情移入するようになれば、その人物にとって『Backrooms』との遭遇は初めてなわけです。だから観客も、ある程度はあの最初の感覚をもう一度味わえるんです。

そこで選んだ2人は、その時代の世界や経済に対して、それぞれ特徴的な関係を持っています。

クラークは、建築や物質的なものと非常に強い関係を持っています。家具店で働いていて、ある意味では「空間を構築する」という行為を、自分が持っている魔法の力のように扱っている。でも実際には、その力を本当に発揮できているようには見えない。そして『Backrooms』が、ある意味ではその願望に応えてしまう。

Backrooms
© 2026 Backrooms Rights LLC, PC Films, LLC. All Rights Reserved.

この点について、LLMやAIによる精神的な混乱のようなものと重ねて見る人もいます。ランダムなノイズの中に、自分を肯定してくれるものや、途方もなく深い意味を見出してしまうような感覚ですね。そういう要素も少しあります。

もうひとりのメアリーも、一見するとクラークとはかなり違いますが、似たような意味で孤立しています。彼女もまた、世界を生きていくためにさまざまなシステムを自分の中に構築してきた人物です。そして“複合施設”と接触することで、そのシステムが崩壊していくところを目の当たりにすることになります。

バックルームズ
© 2026 Backrooms Rights LLC, PC Films, LLC. All Rights Reserved.

──映画では、家具店の地下室が『Backrooms』への入口になっています。なぜ家具店を選んだのでしょう?

実は、オリジナルの『Backrooms』の写真が家具店で撮影されたものだと判明するよりも前に、その設定は決めていたんです。アイデア自体はすでに脚本にありました。

とはいえ、オリジナル写真には壁の仕切りのようなものが見えますから、「もしかしたら家具店なんじゃないか」と推測している人たちはいました。最初に家具店という発想が出てきたのも、そこからだったのかもしれません。

バックルームズ
© 2026 Backrooms Rights LLC, PC Films, LLC. All Rights Reserved.

でも、もっと重要なつながりは、さっき話していたことです。家具店というのは、特にあの時代、自宅やオフィスなど、自分が過ごす空間をどう構成するかを決める場所ですよね。

それに「back room」という言葉から僕が最初に思い浮かべるのは、小売店のバックヤードです。商業活動の余剰物が置かれている空間。そして家具というものは、僕たちの日常生活のあり方を形作るために、ものすごく大きな効果を持っています。

そのことって、意外と見落とされていると思うんです。僕自身、育ってくる中でたくさんの醜い建物を通ってきましたけど、建物の造り方や家具の配置によって、その空間にいる人間の心理が根本的に変わり得ることについて、驚くほど意識されていない。もちろん、多くの場合は単純に経済的な制約なのかもしれませんが。

『Backrooms』もある意味では、人間の意識や存在そのものを濾過する装置のようなものだと思っています。中に入り込んだ人間を、何らかの形で試す場所です。

クラークはすでに、その商業化されたバージョンのような世界で暮らしているとも言えます。彼自身の経済的な生活は、人々の現実そのものを形作るような物理的商品を流通させ、販売することと結びついている。でも、その影響は完全に隠されていて、本人も自分の仕事をそんなふうに考えたことはおそらくない。そこが、ある意味ではつながっているんです。

──YouTubeでは、ほぼすべてを自分自身でコントロールできたと思います。しかし今回は俳優がいて、それぞれが役や物語について自分なりのアイデアを持ち込むこともできます。俳優たちによって何か変化した部分はありましたか?

大きく変わったものはなかったと思います。あくまで協力しながら作る関係でした。

話し合いのほとんどは撮影に入るずっと前に行われていたので、撮影現場でキャラクターが劇的に変化するようなことはありませんでした。

ただ、実際に『Backrooms』のセットを丸ごと建てたことの面白さのひとつ……というより、一番大きな面白さは、俳優たちに感覚的な意味で必要なものをすべて与えられたことです。

『Backrooms』に触れることができる。目で見ることができる。その場で360度振り返っても、あらゆる方向に空間が続いている。そして『Backrooms』の匂いまで嗅ぐことができる。

そういう状況に俳優を置くと、彼らがどう動くのか、どんな細部に目を留めるのか、どのように空間を歩き回るのか、何に個人的に惹きつけられるのかについて、かなり自由度が生まれます。

バックルームズ
© 2026 Backrooms Rights LLC, PC Films, LLC. All Rights Reserved.

セットは全部そこに存在しているので、VFXやビジュアライゼーション上の都合で制限する必要もありません。たとえばクラークが、山積みになった家具の中でこちらではなく別の家具に触れたとしても、何の問題もない。全部そこにあるので、俳優自身が自由に関わることができるんです。そういう即興ができる余地は、なるべく残しました。

ただし、キャラクターそのものの選択や、作品のテーマ的な意味を根本的に変えるようなことはなかったと思います。

──YouTubeなら作品を公開すると、すぐに観客の反応が得られたと思います。しかし映画は、完成までにずっと長い時間がかかります。その違いによって不安を感じましたか? それとも、逆に自由になれましたか?

Writer

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中谷 直登Naoto Nakatani

THE RIVER創設者、運営代表。執筆・編集から企画制作・取材・出演まで。数多くのハリウッドスターに直接インタビューを行なっています。お問い合わせは nakataniアットriverch.jp まで。

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