『バックルームズ』監督来日ロングインタビュー ─ 「従来のハリウッドは、以前ほど広い層に語りかけられなくなっている」
──この映画には、強い1990年代へのノスタルジーがあります。ただ、あなたは2005年生まれなので、その時代を直接経験してはいません。なぜ90年代を描きたいと思ったのでしょう?また、自分が経験していない時代のノスタルジーを、どうやって理解したのでしょうか?
その選択は、YouTubeシリーズの本当に最初の頃から決めていました。
物語はずっと1990年を中心に設定されています。多くの出来事にとって1990年が重要な年で、その前後数年間も描かれています。
ただ、テクノロジーという意味では、僕の子ども時代にもかなりアナログなものが残っていました。だから、その違いは想像されているほど極端ではない気がします。
たとえば、2026年の子ども時代と2005年頃の子ども時代の違いに比べれば、僕の子ども時代と90年代の違いは小さかったんじゃないでしょうか。僕も子どもの頃、カセットプレーヤーをたくさん使っていたし、VHSに録画していました。テクノロジー的には、ある程度似ていたんです。
それ以外の部分では、当時のアメリカの産業や経済的な状況、そして人間とテクノロジーとの関係がどの地点にあったのかを考えました。
もちろん、舞台の都合上、この物語はかなりアメリカ側の視点に偏っています。でも、90年代にはある種の楽観主義のバブルがあったと思うんです。そしてそれは2000年代初頭に明確に崩壊した。
90年代には、ものすごい圧力を持った何かが水面下で膨らんでいたけれど、それがまだ巨大な灰色の雲として表面化してはいなかった。だから冷戦が終わった直後の90年代初頭を舞台にすることは、当時のテクノロジーや政治的緊張を描くうえでも必要でした。そういう、ごく実務的な理由もあります。
それに『Backrooms』そのものが、ノスタルジックなイメージや図像を強く喚起するものです。少し単純な答えになってしまいますが、あの時代を使うことで、「もっとシンプルで、もっと手触りがあって、今ほど人々がバラバラではなかった過去」という感覚に思いきり寄りかかることができるんです。

──僕は子どもの頃、夜中の「ジャングルクルーズ」や「カリブの海賊」の中にひとり置き去りにされたらどうしよう、と想像するのがすごく怖かった(笑)。あなたにも、子どもの頃に怖かった場所や体験、記憶はありましたか?特に暗闇や、ひとりになることを想像した時に。そういう思い出が本作に繋がっているのかなと。あなたは「未知のものへの恐怖」を作るのがとても上手なので、それがご自身の人生のどこから来ているのか気になりました。
ひとつの場所から来ているのかどうかは、わからないですね。今、必死に思い返しています(笑)。
昔から僕は、空間や建物に、人間的な性質をかなり強く感じ取るところがありました。場所や建物を探索することにも、ずっと強い好奇心があります。
たとえば、ある部屋と、そこから一度も出ない人間との間にどんな関係が生まれるのか。そういうものにすごく興味があるんです。子どもの頃から、長い間ひとつの部屋に閉じこもっているような人を見ると、その人と空間との関係を考えていました。
これは僕の中では「怖い」という感覚とは少し違います。ホラーというわけでもない。だから、質問への正確な答えではないかもしれません。
でも、ひとつの部屋とのものすごく親密な関係や、その空間のあらゆる細部を知り尽くしてしまうことには、昔から何かすごく重要な……あるいは、もの悲しくて、少し居心地の悪い感覚がありました。いろいろな受け止め方ができると思います。
僕が人生の中で強く執着してきたものの多くも、限られた空間に人が慣れきっていくことや、その中で作られるルーティン……そういうすごく細かいモチーフなんです。
だから、たぶんそういういろいろなものが混ざり合っているんでしょうね。とにかく僕は、空間というものにものすごく強く惹かれているんです。
……あと、小さい頃、家の近くの通りに、ニワトリの形をした郵便受けがあったんですよ。2歳くらいの僕は、そのニワトリがものすごく怖くて、その道を通ることを完全に拒否していました(笑)。なぜ怖かったのかは、自分でもわかりません。
──ありがとうございます。これが最後の質問でした。本日はありがとうございました。とても楽しかったです。
僕もです。ありがとうございました。

映画『バックルームズ』は公開中。




























