『バックルームズ』監督来日ロングインタビュー ─ 「従来のハリウッドは、以前ほど広い層に語りかけられなくなっている」
──僕も映画化のニュースを初めて聞いた時、正直「嘘でしょ? どうやって?」と思いました(笑)。そもそも、はっきりした物語があるわけでもないのに、どうやって映画にするんだろう、と。
ですよね。でも、そもそも物事そのものに「物語」が存在しているわけではないとも思うんです。物語というものは、あらゆるところにある。僕たちは何もかもを、物語を通して認識しています。
僕は基本的に、「悪いアイデア」というものは存在しないと思っています。やり方が悪いだけか、アイデアを観客に体験させる方法がうまくいっていないだけです。
500人の映画監督がいれば、技術的には500本のまったく違う『Backrooms』映画を作れると思います。それぞれ全然違う作品になっても構わない。
ただし、オリジナルのアイデアから離れすぎて、『Backrooms』というタイトルがついているだけで、実際には何の関係もない作品になってはいけない。核となるアイデアには、きちんと触れなければいけません。
そもそも、人は何に惹かれて『Backrooms』にやってきたのか。あの画像とキャプションです。なぜ2019年当時、誰かがあの画像にわざわざ時間を使ったのか? そこでは、どんな不安が刺激されていたのか?そこまでたどり着いて、それを予測できない良質なキャラクター描写やシーンで包み込むことができれば、答えは見つかると思います。

──この映画の成功を受けて、YouTube発のホラー映画がひとつのトレンドになりつつあるように見えます。この流れは今後も拡大していくと思いますか?それとも、一過性のものだと思いますか?
僕個人としては、それをひとまとめにして語ることには、少し違和感があります。確かに「トレンド」ではあります。でも、たとえば『Backrooms』と『Obsession』の間に、何か本質的な関係があるとは思わないんです。似た映画ではないですし、まったく違う形で生まれた作品ですから。
むしろ僕が面白いと思うのは、存在していなかったはずの「関係性」や「物語」を、みんながどうやって作り上げているのかということです。本来は関係なんてなかった。でも、みんなが「これはひとつの流れだ」という考えに一斉に飛びついたことで、今度はその現象自体が本当の現象になってしまった。
文化的な受け止め方や、それをめぐる物語があまりにも強く構築され、何度も繰り返された結果、もともとは存在しなかったはずなのに、みんなが信じることで本当に存在するようになったんじゃないか、と考えてしまうほどです。
……今、かなりバズワードだらけのことを言いましたけど(笑)。ただ、今は実際にたくさんのプロジェクトが企画されています。その中には、開発途中で消えてしまうものもかなりあるでしょうし、完成してもそこまで高く評価されないものもあると思います。
そうならないでほしいですけどね。今起きていること自体は面白いと思います。何が起きるにせよ、これは単純に世代の変化でもあります。
インターネットを神話の源として、その中で物事を考える方法を身につけながら育った人たちが、今ようやく映画業界の中で作品を作れる立場に入り始めている。そして、この「物語」がここまで広まったことで、彼らにもチャンスが与えられるようになった。
こういうことはいつの時代にもあります。ある意味では、常にバトンの受け渡しが起きています。従来のハリウッドは、少しずつ走れる距離を使い切りつつある。以前ほど広い層の人々に語りかけられなくなっている。
一方で、これは新しいし、新鮮です。2000年代初頭に生まれて、InstagramやTwitter、Discordなどを日常的に使っている人間の文化的な感覚には、より直接的につながっていると思います。インターネットと並行して成長し、それによって生まれた文化の中で育った人間だからこそ、無意識のうちに持っている感覚があるんです。
──この映画には、強い1990年代へのノスタルジーがあります。ただ、あなたは2005年生まれなので、その時代を直接経験してはいません。なぜ90年代を描きたいと思ったのでしょう?また、自分が経験していない時代のノスタルジーを、どうやって理解したのでしょうか?























