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なぜドウェイン・ジョンソンはDCユニバースのヒエラルキーを変えられなかったのか?

ブラックアダム
© 2022 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved TM & © DC Comics

さらに、ドウェインとワーナーの関係性は、実はこれ以前から希薄になっていたことも報じられている。ドウェインは、DCヒーローのペットが登場するCGアニメ映画『DC がんばれ!スーパーペット』(2022)の主人公クリプト/スーパードッグの声優を務めると共にプロデューサーも担ったが、ほとんど宣伝をしてくれなかったためだ。また、同作はPG-13の子ども向け作品であるにもかかわらず、ニューヨークのプレミアイベントでは自身がプロデュースするテキーラ「テレマナ」のバーを設置したいと主張したこともあったという。「彼の要求はどんどん増えたものの、見返りがなかった」との内通者の言葉も紹介された。

「見返り」とは映画の興行収入のことも指しているだろう。実際のところ、『ブラックアダム 』は再撮影に費用がかさんだため赤字に終わっている。

セルフプロデュース能力に長けたドウェインは、過去にも大作映画を自身の主導で成功させた成功経験を多く持つ。たとえば『ワイルド・スピード』はシリーズ途中参加だったものの、自身のスピンオフ映画『ワイルド・スピード/スーパー・コンボ』(2019)を実現させた。これは本家シリーズとは製作陣の異なる作品であり、ドウェイン自身もプロデュースの一角を担った。作品をめぐっては、本家主演のヴィン・ディーゼルとの不仲が取り沙汰されるなど不穏な話題もあった。

また、『ジュマンジ』シリーズやNetflix映画『レッド・ノーティス』(2021)『レッド・ワン』(2023)、ディズニー映画『ジャングル・クルーズ』(2021)でも、自身の製作会社セブン・バックス・プロダクションを通じてプロデュースを行っている。数々の大手スタジオを渡り歩きながら、ザ・ロック印のアクション・エンターテインメントを続々と送り出してきた。ケヴィン・ハートやライアン・レイノルズとの共演が多く、作品に度々登場させる傾向もある。

DCユニバースのヒエラルキーを変えると息巻いたドウェインだったが、最終的にワーナーでの『ブラックアダム』主導計画は、より大きな計画に呑まれて消えることとなった。ドウェインは事実上のシリーズ終了を伝える声明で、「DCの大勝利を願う」として謙虚な姿勢を示している。もっとも、その文中でも「テレマナを飲まなきゃ」と、件のテキーラの宣伝も忘れていないわけだが。

ドウェインには、ドウェインの腕力でDCユニバースを立て直す気概があったことは事実だ。しかしながら今振り返ってみれば、あらゆる重要な出来事がDCユニバース変革の最中で、ほとんど“どさくさ”に紛れた形で実行されてしまったようである。もしもドウェインのDC参加が、ガンらのDCスタジオ設立以降に起こっていれば、彼のブラックアダムがまた違った形で彼らの計画に組み込まれることがあったかもしれない。もっとも、ガンらは今後のユニバース展開を10年規模で計画しているというから、 あくまでも『シャザム!』の派生キャラクターであるブラックアダムは、いずれにせよカーンダックでしばらく封印されたままだったろう。

Source:Variety

Writer

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中谷 直登Naoto Nakatani

THE RIVER創設者。代表。運営から記事執筆・取材まで。数多くのハリウッドスターにインタビューを行なっています。お問い合わせは nakatani@riverch.jp まで。

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