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【ネタバレ】『ジョン・ウィック:パラベラム』◯◯◯シーンは任侠映画の影響なのか ─ キアヌ・リーブス、取材中に豹変

ジョン・ウィック:パラベラム

この記事には、『ジョン・ウィック:パラベラム』のネタバレが含まれています。

ジョン・ウィックさん、エンコ詰め

『ジョン・ウィック:パラベラム』では、ジョン・ウィックさんが自身への暗殺指令の撤回を求め、サハラ砂漠で主席連合(ハイ・テーブル)の首長と面会していた。そこで首長がジョン・ウィックさんに要求したのは、主席連合への生涯の忠誠、ウィンストンの暗殺、そして過去への決別の証……、指を切り落とすことだった。

チャド・スタエルスキ監督やキアヌ・リーブスは、本作の日本映画からの影響を公言しているだけあって、指を詰めるシーンは日本のヤクザ映画を彷彿とさせる。一般的に映画などでも描かれる日本の任侠の世界では、禊として小指を切り落とすが、ジョン・ウィックは薬指から詰めた。

指切りのシーンは日本の任侠映画の影響なのか。そう尋ねられたキアヌは「ヤクザについてはあまり存じ上げない」「様々な文化のトライブ(部族、族)を意識した」と答えているから、必ずしもそのまま引用したというわけでもなさそうだ。ただしキアヌは、「忠誠や仁義、自己犠牲、献納といったところは、確かに日本的な概念ですね」と認める。「そこに、自分たちなりの解釈を取り入れたんです。

「自分たちなりの解釈」についてチャド監督は、「指輪も一緒に斬り落としたでしょう?指がなければ指輪も付けれない」と、小指でなく薬指を切った理由を明かす。「首長は、指輪が意味するものを欲しがったんですよ。つまり、ジョンの一部を斬り落として、彼の……」と言いかけた時、隣でキアヌが「弱点を取り除こうとしたわけです」と加わり、突如として同シーンの再現を始めた。

それまで温和に、物静かに取材に答えていたキアヌは、黒髪を振り乱し、長い腕を振り上げて気合いの声を上げながら、力いっぱいに指を切る動きを披露。そのまま、ブルブルと震わせる両手を筆者の方に差し出し、「捧げます……」、絞り出すような低い声。圧倒される筆者をよそに、チャド監督は「指がなければ、もう指輪を、つまり愛を付けられない。もう人間としてのジョンではなくなるんです」と解説を続けた。

このやり取りの前、筆者はキアヌに、なぜジョン・ウィックは2代目の愛犬ピットブルに名前を付けないのかと尋ねていた。これに対するキアヌの解説によれば、犬はジョン・ウィックにおける人間性のメタファーであり、彼が冷酷な殺人鬼に完全になりきってしまうギリギリの手前で、人間としての情を繋ぎ止めている存在なのだという。ただし、「犬は犬だから、名付けの必要はない」とも語っており、それはジョン・ウィックの人間性の喪失を示唆するものだ。

薬指を切ったことの意味を教えられ、「ジョンにはいよいよ何も残されていないじゃないですか」と返すと、キアヌは「イエス」と答える。チャド監督が「家もない。安全な場所もない。人間性も、愛も、記憶もなくなっていく」と続けると、最後にキアヌが「彼に残されたのは、……怒りだけです」とつぶやいたのだった。

映画『ジョン・ウィック:パラベラム』は大ヒット公開中。

Writer

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中谷 直登Naoto Nakatani

THE RIVER創設者。代表。運営から記事執筆・取材まで。数多くのハリウッドスターにインタビューを行なっています。お問い合わせは nakatani@riverch.jp まで。

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