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ハリウッド大作に出演の俳優、それでも俳優業を無期限休止、「演技だけではもう稼げない」 ─ 大作出演でも「次の仕事」がない世界

https://www.instagram.com/p/DY3BBHPx3Qb/

『オッペンハイマー』(2023)で物理学者イジドール・ラビを演じ、DC映画『スーパーガール』(2026)では主人公カーラの父ゾー=エル役を務めたデヴィッド・クラムホルツが、34年にわたって続けてきた俳優業を無期限で休止することを明かした。ハリウッド大作への出演を重ねてもなお、演技の道を一時断念せざるを得ない理由とは。

発端は2026年8月17日の本人のThreads投稿。投稿そのものはすでに削除されているが、その内容を記録した米Peopleによれば、クラムホルツは以前から俳優業を止めることに強い恐怖を抱えつつ、実入りに対しても不安があったという。

「俳優業を止めるのは、何年も怖くて仕方がありませんでした。とりわけ怖かったのは、お金が尽きることでした。」

すべてのノーラン映画は『オデュッセイア』へ通ず

「この世界から離れること」に耐えられるのかという不安もあったという。それでも今回、俳優業を保留にする決断を関係者へ伝えたところ、「大きな安堵」を覚えた。今後どのように収入を得るかはまだ分からないとしながら、現在の心境を「苛立ち、うんざりし、燃え尽きた」と表現している。

意外なのは、クラムホルツが決して長らく仕事から遠ざかっていた俳優ではないことだ。近年だけでも『オッペンハイマー』、ドラマ「ザ・スタジオ」、そして『スーパーガール』と話題作への出演が続いている。それでも本人によれば、この1年間はキャラクター俳優として役を得るために「戦って」きたという。提示される仕事についても、自身が積み重ねてきた実績や才能に対して見返りがますます小さくなっているとの不満を吐露した。

さらに、テレビや映画、舞台で演じるだけでは十分な収入にならず、ファンイベントやインターネット広告の仕事を得るために、SNS上で自分自身を「ブランド化」し、「いいね」やフォロワーを集めることまで求められる現状にも疑問を呈している。俳優として作品に出演することと、その知名度を自ら継続的に換金していくことが、以前より密接に結びついているという実感があるようだ。

もっとも、クラムホルツ自身は今回の決断を「ハリウッド全体の問題」に還元することには慎重だ。8月19日にInstagramで改めて説明した内容を米Peopleが伝えたところによれば、「引退」「辞める」という言葉は使っておらず、あくまでキャリアを保留にしたのだと説明。「これはハリウッド全体の問題ではなく、自分自身の問題です」とも記した。数少ない大きな成功の一方で「山のような失望」も経験してきたとして、家族のためにも自身のメンタルヘルスを守る時間が必要だという。

「次の仕事がなくなる恐怖」は、多くの俳優にとって付き物である。米労働統計局(BLS)は俳優という職業について、仕事は通常「1日から数カ月」の短期であり、役と役の間に失業期間が生じることがあると説明している。生活のために別の仕事を持つ俳優も多く、「次の仕事を見つけなければならないストレス」に頻繁にさらされることまで職業上の特徴として挙げられている。

会社員のように毎月の仕事と収入が継続する働き方を基準にすれば、「1年間仕事がない」という状況はかなり異例に聞こえる。ところが俳優の場合、世界的な作品に出演し、高い評価を得ていても、空白期間は突然やってくる。

つい先ごろも、その現実を語ったのが『オデュッセイア』(2026)のサマンサ・モートンだった。アカデミー賞に2度ノミネートされ、クリストファー・ノーラン最新作でも高く評価されたモートンだが、同作の撮影を終えてから約1年間、新たな俳優仕事がなかったことを告白。優秀なエージェントとマネージャーがいて、自身の演技力にも自信はあるとしながら、「業界の力学は大きく変わった」と語っていた。

さらに『スーパーガール』主演のミリー・オールコックにも、よく似た空白期間があった。「ハウス・オブ・ザ・ドラゴン」の主要キャストとして世界的に注目された後でさえ、Netflixドラマ「SIRENS セイレーンの誘惑」の撮影終了から約1年間は仕事がなかったという。本人は、その時期に「22歳で自分の人生はもう終わったのではないか」と本気で怖くなったと振り返っている。その後に舞い込んだ大役がスーパーガールだった。

『スーパーガール』は世界興収約1億2,600万ドルと興行面では苦戦したが、だからといってオールコックが再び仕事への不安を抱えていると考える根拠はない。むしろ現時点では、2027年公開予定の『マン・オブ・トゥモロー(原題)』へのスーパーガール役での再登場がすでに決定している。ひとつのヒットが将来を保証するわけでもなければ、ひとつの興行不振が直ちに俳優個人のキャリアを終わらせるわけでもない。この先が読めないこと自体が、俳優業の不安定さでもある。

そのことを端的に示した例が、『アラジン』(2019)のメナ・マスードだ。同作は世界興収10億ドルを突破する大ヒットとなり、マスードはタイトルロールを演じた。大ヒットディズニー映画の顔となったわけだが、それでも「『アラジン』公開後、一度もオーディションを受けていない」と明かしている。「次はバットマンをやらせてくれと言っているわけじゃない。ただ部屋に入って、チャンスをもらえないかということ」と訴えていた。

観客から見える俳優のキャリアは、完成した作品が数珠つなぎに並んだフィルモグラフィーだ。そのため、大作から大作へ順調に進んでいるようにも見え、煌びやかな世界で定期的な注目を集めているように感じられることだろう。

しかし実際には、その作品と作品の間に何カ月、時には1年以上もの空白があり、その間もオーディション、不採用、収入への不安と向き合い続けている。さらに、オーディションや撮影の日取りは思わぬほど突然告げられることも多い。急なスケジュールに融通が効く別の仕事を見つけることも、続けていくことも、現実的には難しいこともある。

クラムホルツは「アーティストの人生は賭けだ」とも記していた。34年間その賭けを続け、『オッペンハイマー』や『スーパーガール』にまで出演した俳優でさえ、「仕事を止めればお金が尽きるのでは」という恐怖から自由ではなかったということになる。今回、そのサイクルからいったん降りることを選んだクラムホルツは、今後について学校で子どもたちを勇気づける講演活動などにも関心を示している。出演済みの未公開作品も残っており、本人も俳優を完全に辞めるつもりはないとしている。

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Source:People, People, U.S. Bureau of Labor Statistics, Vanity Fair, The Daily Beast

Writer

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中谷 直登Naoto Nakatani

THE RIVER創設者、運営代表。執筆・編集から企画制作・取材・出演まで。数多くのハリウッドスターに直接インタビューを行なっています。お問い合わせは nakataniアットriverch.jp まで。

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