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クリストファー・ノーラン、フランチャイズ映画の氾濫に「バランスを保たねば」 ─ エドガー・ライトは「悲しい」

クリストファー・ノーラン エドガー・ライト
Gage Skidmore https://www.flickr.com/photos/gageskidmore/9345815579/ | HellaCinema https://commons.wikimedia.org/wiki/File:DunkirkFilmGearPatrolLeadFull.jpg | Remixed by THE RIVER

巨匠マーティン・スコセッシは、ハリウッドにおけるスーパーヒーロー映画や大作フランチャイズの氾濫を、映画文化の“危機”として捉えた。「“映画にはそういう作品しかないんだ”と考える世代が出てくる」と述べ、スタジオが工業的に映画を製作し、映画館がそれらをありがたがることで、映画の多様性が失われることへの危惧を表明したのだ。

そのなかで、スコセッシが映画界を代表する逸材、彼が言うところのシネマ(cinema)を生み出す人物として名を挙げたのがクリストファー・ノーランだ。興行収入ランキングをフランチャイズやIP(知的財産)作品が占める中、ノーランは伝記映画『オッペンハイマー(原題)』で上位に食い込んだ。現在、ノーラン自身は映画界に氾濫するフランチャイズ作品をどう捉えているのか。

Associated Pressにて、ノーランは「ハリウッドは常に、観客を確実に呼び戻せるタイトルや、人々が望むものを提供する作品でバランスを取ってきたように思います。それらがハリウッドの経済の大部分を占め、あらゆるタイプの映画を製作し、配給するための資金になってきた」と指摘した。観客を呼べる作品があるからこそ、別の作品でリスクを背負えるのだ、という考え方だ。

もっとも、ノーランは「新しいものを求めている観客にも常に敬意を払わなければいけません。映画を観に行く大きな楽しみのひとつは、聞いたことのない映画、観たこともない種類の映画の予告編を観ることですから」とも語った。「ハリウッドの健全な生態系は、これら2つのバランスを保たなければなりません。今までがそうだったように」との言葉には、スコセッシの意志にも重なるものが見て取れる。

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一方、フランチャイズ映画の現状に対し、よりストレートな言葉で切り込んだのは、『ラスト・ナイト・イン・ソーホー』(2021)『ベイビー・ドライバー』(2017)のエドガー・ライトだ。ポッドキャスト「Happy Sad Confused」にて、「特定のフランチャイズを貶すことはしたくない」と前置きしながら、「一部のフランチャイズは一旦休んで、人々を再び熱中させてほしい。僕自身も、以前は大好きだったのに、もう観たくない、しばらく観たくないものがあるから」と話した。

「僕たちは新しい映画をもっと観たい。“IP”とは恐ろしい言葉ですが、シリーズ化できるような新しいものを発見することにも似ていて、同じことを繰り返す必要はないんです。僕も、“今後はすべてをオリジナルにすべきだ”というほどナイーブでもありません。もちろん、そうなったら素晴らしいし、インディーズ映画や海外作品には素晴らしい映画もたくさんあります。[中略]スタジオが現在のIPに投資するのと同じくらい、オリジナル映画にも投資することを望みます。」

ライトはこのようにも述べている。「人々は『エイリアン』が1979年まで遡る作品であること、『ターミネーター』が1984年の、また『スター・ウォーズ』も1977年のオリジナル脚本だったことを忘れている気がします。つまり、スタジオはそういう賭けを──1999年に『マトリックス』のために予算を投じたようなことを──したくないように思える。そのことが僕は悲しい」。

ノーランとライト、スコセッシは、より新しく、より多様な映画が上映されることをともに願っている。ノーランは、「私たちはそれぞれの映画に対し、それぞれ異なる期待をもっているもの。先週とは違うものを観たくて映画館に行くのです」と語った。「ホラーやコメディ、ドキュメンタリーなど、映画館のスクリーンは何にでもなれます。映画がより多様になり、より面白い作品がつくられるほど、映画ファンや業界のプロフェッショナルたち全員の利益になるのです」。

Sources: Associated Press, Happy Sad Confused

Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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