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【解説】『バックルームズ』の空間フェチズム ─ 監督「とにかく僕は、空間というものにものすごく強く惹かれている」

Backrooms
© 2026 Backrooms Rights LLC, PC Films, LLC. All Rights Reserved.

謎の異世界空間をミステリアスに描く映画『バックルームズ』のケイン・パーソンズ監督は、昔から「空間」というものに強く執着してきた。

部屋や建物そのものに人間的な性質を感じ取り、そこに長くいる人と空間のあいだにどんな関係が生まれるのかを、子どもの頃から考えていたという。その関心は、『Backrooms』の不気味な空間表現にも色濃くつながっている。

バックルームズ
© 2026 Backrooms Rights LLC, PC Films, LLC. All Rights Reserved.

筆者の単独インタビューで、子どもの頃に怖かった場所や記憶について尋ねると、パーソンズは恐怖そのものよりも、空間への強い興味について語り始めた。

「昔から僕は、空間や建物に、人間的な性質をかなり強く感じ取るところがありました。場所や建物を探索することにも、ずっと強い好奇心があります。」

パーソンズが惹かれてきたのは、たとえば廃病院や夜の学校といった、単に「怖い場所」ではない。ある空間の中に人間が長く留まった時、両者の間にどんな関係が生まれるのかという心理的な影響を、子どもの頃から考えていたという。

「たとえば、ある部屋と、そこから一度も出ない人間との間にどんな関係が生まれるのか。そういうものにすごく興味があるんです。子どもの頃から、長い間ひとつの部屋に閉じこもっているような人を見ると、その人と空間との関係を考えていました。」

本人も、それを単純な恐怖心とは捉えていない。「これは僕の中では『怖い』という感覚とは少し違います。ホラーというわけでもない」と分析してい

むしろパーソンズが感じてきたのは、ひとつの場所に長く留まり、その空間を知り尽くしてしまうことへの、もっと曖昧な感情だ。

「ひとつの部屋とのものすごく親密な関係や、その空間のあらゆる細部を知り尽くしてしまうことには、昔から何かすごく重要な……あるいは、もの悲しくて、少し居心地の悪い感覚がありました。」

こうした感覚は、誰もいない廊下や営業時間外の商業施設など、日常的な場所から人の気配だけが抜け落ちたような「リミナルスペース」に通じるものでもある。『Backrooms』もまた、そうした懐かしさと居心地の悪さが同居する空間イメージと深く結びついてきた。

その関心は、さらに細かなモチーフへ向かっている。

「僕が人生の中で強く執着してきたものの多くも、限られた空間に人が慣れきっていくことや、その中で作られるルーティンとか……そういうすごく細かいモチーフなんです。」

こうした感覚は、『Backrooms』という題材との相性があまりにもいい。「そもそも僕が短編を作る以前の『Backrooms』というアイデア自体、人が誰も写っていない何枚かの画像の集合体でした」と監督は話す。「人々が惹かれていた中心的な感覚は、すごく個人的なもので、空間そのもの、コンセプトそのものに意識が向けられていたんです」。

パーソンズ自身、建物や家具が人間の心理に与える影響を強く意識している。

「建物の造り方や家具の配置によって、その空間にいる人間の心理が根本的に変わり得ることについて、驚くほど意識されていない。」

映画版の主人公クラークが家具店で働き、建築や物質的なものに強く惹かれているのも、その延長線上にある。パーソンズによれば、クラークは「空間を構築する」という行為を、自分に備わった魔法の力のように捉えている人物だ。

バックルームズ
© 2026 Backrooms Rights LLC, PC Films, LLC. All Rights Reserved.

そして、その願望に応えるように現れるのがBackroomsである。

「『Backrooms』もある意味では、人間の意識や存在そのものを濾過する装置のようなものだと思っています。中に入り込んだ人間を、何らかの形で試す場所です。」

怖いから空間を描くのではなく、空間が人間をどう変えるのかに興味がある。パーソンズにとって『Backrooms』とは、幼い頃から考え続けてきたその問いを、極端な形で追いかけられる場所なのだろう。「とにかく僕は、空間というものにものすごく強く惹かれているんです」。

映画『バックルームズ』は公開中。

Writer

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中谷 直登Naoto Nakatani

THE RIVER創設者、運営代表。執筆・編集から企画制作・取材・出演まで。数多くのハリウッドスターに直接インタビューを行なっています。お問い合わせは nakataniアットriverch.jp まで。

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