原作モノ映画化の「失敗」は避けたい『バックルームズ』21歳監督、「タイトルだけ借りる映画化はいけない」

人気ゲームやコミック、ネット発のコンテンツがハリウッドで映画化されるたび、ファンから決まって飛び出す不安がある。「本当にわかっている人が作っているのか?」というものだ。
映画『バックルームズ』を手がけた21歳のケイン・パーソンズ監督も、まさしくそんな不安を抱いてきたひとりだった。人気コンテンツが大きなスタジオの手に渡り、もともとのファンが愛したものとは似ても似つかない作品になってしまう。そんな“失敗事例”を、これまで何度も目にしてきた失望を、筆者との単独インタビューで打ち明けた。

もっとも『Backrooms』は、一般的な意味での「原作」が存在する作品ではない。2019年に匿名掲示板へ投稿された、不気味な黄色い部屋の画像と短い文章を起点に、インターネット上の無数のユーザーが解釈や設定を加えながら巨大なネット都市伝説へと発展してきた。その中でパーソンズ自身も16歳からYouTube短編を制作し、独自の『Backrooms』世界を築いてきた張本人だ。
だからこそ長編映画化には、大きな責任も伴った。パーソンズは「『Backrooms』というもの全体に大きなファンベースがある」と語っている。自身のYouTubeシリーズだけではなく、すでに巨大なコミュニティ全体が存在していたのだ。
そんな題材を自らの名で背負って映画化することにプレッシャーを感じたか尋ねると、パーソンズはこう答えた。
「もちろん、きちんと作品にするというプレッシャーはありました。ただ、その頃にはある意味、そのプレッシャーをすでに自分の中に取り込めていたんだと思います。僕はもう何年も『Backrooms』の短編を作り続けていて、公開するたびにオンライン上のみんなから評価されてきたわけですから。」
長年にわたりYouTubeで作品を発表し続けたことで、「自分の観客が何に反応するのか、自分自身がクリエイティブに何に反応するのか」も理解していたという。そのため、長編版が「どういうものであるべきか」については自信があった。
むしろ不安だったのは、インターネット上で自由に制作してきた自分が、巨大な映画産業の中でどこまでそれを貫けるのかということだった。
「『どこまで自分のやりたいことが許されるんだろう』という不安はありました。僕がそれまでいた世界には存在しなかった、より大きな映画業界の常識や慣習がありますから。」
そしてここで、パーソンズは既存コンテンツの映画化に対する率直な不満を明かしている。
「ビデオゲームの映画化や、『Backrooms』のような題材を扱ったプロジェクトが、スタジオやブランド、製作チーム、脚本によって十分なケアを受けられず、ファンが求めていたものとは全然違う作品になってしまう例を、何度も目にしてきました。」
「だから『Backrooms』では、そうならないようにすること、本来のアイデアに忠実であり続けることに、かなり意識を集中させていました」とパーソンズ。いわば彼自身も、大好きな題材が映画化されるたびに“余計な改悪をされないだろうか”と心配してきたファンの側にいるのである。
実際、『Backrooms』の映画化が発表された際にも、もし自分が無関係のファンだったなら、かなり意地悪な目で見ていただろうと笑う。
「もし僕がこのプロジェクトとまったく関係なくて、何も知らず、誰が作っているのかも知らなかったら……僕の中の一番意地悪な部分は、たぶん『こいつらがどうやって失敗するのか見てみたい』と思ったでしょうね(笑)。『どうやるつもりなんだ?』って。」
これは『Backrooms』という題材なら、なおさらだっただろう。明確な主人公も、一本道のストーリーも存在しない。黄色い壁紙、蛍光灯、不自然に続く無人空間。そんな曖昧な感覚そのものが魅力だったものを、いかに長編映画へ変換するのか。

ただし、パーソンズが考える「オリジナルへの忠実さ」は、設定や物語を一字一句なぞることとは違う。むしろ彼は、解釈そのものには大きな自由があっていいと考えている。
「500人の映画監督がいれば、技術的には500本のまったく違う『Backrooms』映画を作れると思います。それぞれ全然違う作品になっても構わない。
ただし、オリジナルのアイデアから離れすぎて、『Backrooms』というタイトルがついているだけで、実際には何の関係もない作品になってはいけない。核となるアイデアには、きちんと触れなければいけません。」
では、その「核」とは何なのか。パーソンズが立ち返ったのは、2019年にすべてが始まった、たった一枚の画像とキャプションだった。
「そもそも、人は何に惹かれて『Backrooms』にやってきたのか。あの画像とキャプションです。なぜ2019年当時、誰かがあの画像にわざわざ時間を使ったのか? そこでは、どんな不安が刺激されていたのか?」

その感覚さえ突き止められれば、そこから先は新しいキャラクターや物語で包み込んでもいい。パーソンズにとって「忠実である」とは、既存の要素をそのまま並べ直すことではなく、なぜ人々が最初にその作品を好きになったのかを忘れないことだ。「僕たちは幸運にも、いくつかの地雷を避けながら、みんなが自分でも意識していなかった“この作品に求めていたもの”に応えられるプロジェクトを作ることができた」と、21歳の若きクリエイターは胸を張った。
『Backrooms』を外側から拾い上げたハリウッドの作り手ではなく、16歳からその世界の中で作品を作り、視聴者の反応を直接受け取り続けてきたパーソンズ。監督であると同時に、現在もなお等身大のファンでもある。その距離感こそが、巨大なインターネット神話を映画にするという難題で、彼が踏んではならない「地雷」を見分ける最大の武器だったのかもしれない。
映画『バックルームズ』は公開中。
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