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【解説】『バックルームズ』なぜ家具店?監督が語る「空間」と「自分」のつながり

バックルームズ
© 2026 Backrooms Rights LLC, PC Films, LLC. All Rights Reserved.

映画『バックルームズ』では、主人公クラークが勤める家具店の地下室に、異世界“Backrooms”への入口が出現する。

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YouTubeで公開されたケイン・パーソンズ監督の短編版では、何もないところから突如として床をすり抜け、Backroomsへ落下するというシンプルな導入だった。では、長編映画ではなぜ「家具店」という具体的な場所が選ばれたのか。筆者の単独インタビューで、パーソンズはその背景を明かした。

「実は、オリジナルの『Backrooms』の写真が家具店で撮影されたものだと判明するよりも前に、その設定は決めていたんです。アイデア自体はすでに脚本にありました。」

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『Backrooms』のすべての始まりとなったのは、2019年にインターネット上へ投稿された、不気味な黄色い部屋の写真だった。のちにその写真が家具店で撮影されたものだったことが判明するが、監督はそれ以前から同じ設定を考えついていたというから驚きだ。

もっとも、完全な偶然とも言い切れないらしい。写真には壁の仕切りのようなものが写っており、以前から一部では「家具店なのではないか」と推測されていた。パーソンズ自身も、「最初に家具店という発想が出てきたのも、そこからだったのかもしれません」と振り返る。

一方で監督には、家具店にも特別な意味を見出している。「家具店というのは、特にあの時代、自宅やオフィスなど、自分が過ごす空間をどう構成するかを決める場所ですよね」「家具というものは、僕たちの日常生活のあり方を形作るために、ものすごく大きな効果を持っています。そのことって、意外と見落とされていると思うんです。僕自身、育ってくる中でたくさんの醜い建物を通ってきましたけど、建物の造り方や家具の配置によって、その空間にいる人間の心理が根本的に変わり得ることについて、驚くほど意識されていない」。

この考え方が、主人公クラークの人物像にもつながるのだと、監督は紹介する。クラークは家具店で働きながら、建築や物質的なものに強く惹かれている人物だ。パーソンズによれば、彼は「空間を構築する」という行為を、まるで自分だけが持つ魔法の力のように捉えている。

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ところが現実のクラークは、その力を存分に発揮できているとは言い難い。そんな彼の前に現れるのが、際限なく空間そのものが生成されていくBackroomsだ。この空間が、「ある意味では彼の願望に応えてしまう」。つまりBackroomsは、単純にクラークを襲う怪異ではない。自らの手で空間を作りたいという彼の欲望を、歪んだ形で肯定してしまう存在でもある。

パーソンズは、この構造をLLMやAIによって人間が意味を見出しすぎてしまう現象になぞらえる見方もあると語る。「ランダムなノイズの中に、自分を肯定してくれるものや、途方もなく深い意味を見出してしまうような感覚ですね。そういう要素も少しあります」。

Backroomsについて、監督は「人間の意識や存在そのものを濾過する装置」のようなものだとも表現する。そこへ足を踏み入れた人間を、何らかの形で試す場所なのだ。

そしてクラークは、Backroomsに入るよりも前から、その“商業化されたバージョン”の中で生きていたとも考えられるという。

「彼自身の経済的な生活は、人々の現実そのものを形作るような物理的商品を流通させ、販売することと結びついている。でも、その影響は完全に隠されていて、本人も自分の仕事をそんなふうに考えたことはおそらくない。そこが、ある意味ではつながっているんです。」

Backrooms
© 2026 Backrooms Rights LLC, PC Films, LLC. All Rights Reserved.

人々が暮らす空間を形作る家具を売りながら、自分自身は思うように空間を作れないクラーク。その地下に、人間の意識さえ変えてしまう無限の空間が口を開ける。

家具店という舞台は、パーソンズが幼い頃から抱いてきた「空間が人間をどう変えるのか」という関心と、クラークという人物の欲望、そしてBackroomsの性質、そのすべてが交差する場所だったのである。

映画『バックルームズ』は公開中。

Writer

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中谷 直登Naoto Nakatani

THE RIVER創設者、運営代表。執筆・編集から企画制作・取材・出演まで。数多くのハリウッドスターに直接インタビューを行なっています。お問い合わせは nakataniアットriverch.jp まで。

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