「脚本未完で撮影してはいけない」にマーベルのケヴィン・ファイギがアンサー「脚本未完で撮影したことはない」

脚本の仕上がっていない映画は撮り始めてはいけない── 新DCスタジオ代表に就任し、キックオフ映画『スーパーマン』を大絶賛とともに世に放ったジェームズ・ガンの発言が話題を集めた。ハリウッドでは公開日を先に決めて見切り発車的に撮影を始める企画が多く、その場合は脚本未完のまま製作を進めるため、作品の出来が悪くなってしまうというのがガンの主張だ。
これは言わば、マーベル・スタジオへのアンチテーゼでもある。マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)と言えば、複数年にわたる映画の公開スケジュールが一挙に発表されることが多いから、ガンが危惧する“公開日先行型”と言えよう。この指摘を受け、マーベル・スタジオのケヴィン・ファイギ社長は現地メディア向けの記者会見にてアンサーを返した。
ただし念のため補っておくと、ファイギはDCに移ったガンと今も良好な関係で、『スーパーマン』の成功も大いに祝福している。そのため、二大スタジオのトップ同士が何か意見を戦わせているといったものではないものと理解しておこう。
脚本万全体制を良しとするガンのDCスタジオに対し、マーベル・スタジオ最新作『ファンタスティック4:ファースト・ステップ』出演者は、撮影開始3週間前のリハーサル時点で脚本が完成していなかったため、「ワークショップ的に映画を作った」と証言。これに対してファイギは、「脚本が完成しないまま撮影を始めたことはありませんし、これまでの脚本に満足したこともありません。公開した映画に満足したこともありません」と回答。スタジオの飽くなき向上心を絡める形で“脚本未完説”を否定した。
マーベル・スタジオでは、他人のアイデアに対して否定したり批判したりせず、常にプラスの意見を付け加える「プラッシング(plussing)」と呼ばれる手法を取り入れているとファイギは説明。これはウォルト・ディズニー式のメソッドで、ファイギは「あらゆる局面で」プラッシングを行っているという。
「そのキャラクターを初めてか二度目に演じる場合であっても、10回も12回も演じている場合であっても、俳優というのはその分野の世界最高の存在であり、キャラクターのことを熟知しているのです。彼らにアイデアがあれば、それを聞いて取り入れ、改善していきたい。その点を変えたくはありません」と、俳優から出る意見を柔軟に取り入れているとファイギは説明。結果的に脚本は、撮影中であってもライブ感を持って変応することになる。
実際に、後から生まれた提案やアドリブによって、印象的な名場面や名台詞が生まれることも少なくない。たとえば、『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』(2019)で消えゆくピーター・パーカーが「行きたくない」とつぶやくのは演じたトム・ホランドによる即興演技。『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019)クライマックスの伝説的なセリフ「私はアイアンマンだ」は脚本では書かれておらず、土壇場になって付け加えられたものである。
現在は『アベンジャーズ/ドゥームズデイ』が撮影中。ファイギは、その現場でも「プラッシング」が日常的に起こっていると主張した。
さらにファイギは、マーベル・スタジオでは決められた枠の中で柔軟に対応していることを、次のように説明している。「映画監督の中には、“私の映画に出たいなら、書かれた通りのセリフだけを言い、何かあった時のためにスケジュールを全部押さえておけ”という人もいます。経験上、ジェームズはそうではありませんよ。私たちは俳優が多いので、そういうことはできません。そういうことはやりません。皆さんにスケジュール枠を決めて、その枠を守るのです」。
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