【考察】『スパイダーマン:ブランド・ニュー・デイ』ピーターはどうやって生活していたのか? ─ ナゾの収入源について考える

ピーターには、同世代をはるかに上回る科学、工学、プログラミングの知識がある。ウェブ・シューターや特殊機器などを独力で開発できる人物であり、プログラム開発や電子機器の修理、オンライン教師、技術資料の作成や科学コンサルティング業などで収入を得ることは十分に可能だ。出勤時間の決まった仕事ではスパイダーマン活動との両立が難しいが、納期さえ守れば働く時間も場所も選べるリモートワークなら都合がいい。

もっとも、「科学コンサルタント」のような専門職として企業と正式に契約するには、学歴や職歴、身分証明、納税者番号などが求められる。大学に進学できず、職務経歴も持たないピーターにとって、大企業の研究案件やコンサルティング業を受注するのは簡単ではないだろう。むしろ小規模なプログラミング案件やウェブサイト制作、故障した機器の修理といった、本人の能力を直接換金できる身近な仕事の方が現実味はある。
倉庫に並ぶ機材についても、すべて新品で購入したとは限らない。廃棄された電子機器を修理したり、ジャンク品から部品を回収したり、これまで戦った犯罪者たちの装備を研究用に転用したりしていれば、調達費用は大幅に抑えられそうだ。ピーターほどの技術力があれば、一般人には価値のない廃品から、高性能な装置を組み上げることもできるはずである。
もうひとつの可能性は、協力関係にあるジーン・デウォルフ刑事、ひいてはニューヨーク市警から報酬を受け取っているというものだ。
現実のニューヨーク市警も、捜査に秘密情報提供者を利用している。また、匿名の情報が凶悪犯の逮捕と起訴につながった場合、情報提供者が報奨金を受け取れる制度も存在する。したがって、警察に情報を提供する正体不明の協力者に金銭が渡ること自体は、まったくあり得ない話ではない。
しかし、これはスパイダーマンを市警の正式な外部職員として雇うこととは別問題だ。覆面をつけ、法的な身元を明かさない人物に、市が毎月の給料を支払うことは現実的ではない。世間に対して匿名であることと、報酬を支払う機関に対してまで完全に匿名であることは同じではないのだ。
デウォルフが捜査協力費や情報提供料として少額を私的に渡している可能性なら残されている。しかし、スパイダーマンは情報を伝えるだけでなく、現場で容疑者を追跡し、直接戦闘を行う。その場合、もはや協力者や情報提供者というより非公式な賞金稼ぎであり、法的責任や捜査手続きの面で問題だらけだ。生活を支える安定収入としては、あまり現実的ではない。
以上を踏まえると、ピーターの経済生活は、ひとつの大きな収入源によって成立しているのではなく、複数の手段を組み合わせたものではないだろうか。メイの遺産や保険金を新生活の初期費用に充て、普段はプログラミングや機器修理などの仕事で最低限の生活費を稼ぐ。研究機材には中古品や回収した部品を活用し、場合によっては警察から捜査協力への謝礼を受け取る。これなら、決して豊かではないものの、どうにかニューヨークで暮らし続けていることには説明がつくかもしれない。
『ブランド・ニュー・デイ』はピーターの孤独を丁寧に描いた一方で、彼がどうやって食い繋いでいたのかは、公式には空白のままだ。1人の青年が、生活とヒーロー活動をどう両立しているのか。その答えは、次回作でぜひ見てみたいピーター・パーカーの日常である。
『スパイダーマン:ブランド・ニュー・デイ』は公開中。
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