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『スパイダーマン2』メイおばさんが石像に救われて「ありがとう」と呟き、ドック・オクを傘で叩くシーンが今も好きな理由

David Shankbone, CC BY 3.0 , via Wikimedia Commons

THE RIVERでは2026年7月3日(金)より、ヒューマントラストシネマ渋谷にて『スパイダーマン2』(2004)のリバイバル上映を行う。というわけで今回は、『スパイダーマン2』の大好きなシーンの話をする。メイおばさんとドクター・オクトパスのシーンだ。

まずメイおばさんというのが、我々アメコミ映画ファンにとって「もう1人の祖母」みたいな存在である。『アメイジング・スパイダーマン』シリーズのサリー・フィールド版は劇中でやや控え目で、マーベル・シネマティック・ユニバースのマリサ・トメイ版も斬新でユニークだったが、やはりサム・ライミ版のローズマリー・ハリス(本記事時点で、98歳でご存命!)が演じたメイおばさんの優しさと気品が、トリロジーに懐かしい親しみやすさをもたらしていたという見方に誰も異論はないだろう。

そんなメイおばさんの姿こそ、トリロジーにおける最大の道徳であり良心である。第1作『スパイダーマン』(2002)では愛する夫のベンを凶悪事件で失い、『スパイダーマン2』で“息子”ピーター・パーカーに責任の一端があると打ち明けられる。しかし、レジリエンスの象徴たるメイおばさんは、同作のうちに「過去のことは水に流しましょう。よく正直に言ってくれた、ありがとう」と、ピーターを許して抱きしめる。

続く『スパイダーマン3』(2007)では、MJを傷つけてしまい揺れるピーターに「まずは一番難しいことをしなさい。自分自身を許すのよ」と諭す。これを受けたピーターは、ベンおじさん殺害の真犯人であるフリント・マルコ(サンドマン)のことも“許す”という一大事業を成し遂げる。つまり、トリロジー最大のテーマである“許し”は、ほかの誰でもなく、メイおばさんによってもたらされた宝物なのだ。

その愛すべきメイおばさんが息を呑む窮地に陥るのが、『スパイダーマン2』のワンシーンである。この日のメイおばさんは、ピーターとともに街の銀行に出かけて融資申請を行うのだが、資産不足を理由に断られてしまう。しかしメイおばさんはめげず、新聞を切り破って持参したトースターのプレゼントキャンペーンについて聞くも、こちらもあえなく対象外。人の子である我々は“祖母”の哀れな姿を見せられ、同情せずにはいられない。

そこにドクター・オクトパスが襲来し、ピーターはすぐにスパイダーマンとして応戦。メイおばさんは置き去りにされてしまうが、手元に転がってきた金貨の一枚をくすねようとする銀行員の手をはたき、小さくも尊い道徳心を提示する。

その後スパイダーマンが劣勢となると、メイおばさんはドック・オクの恐るべきアームに捉えられ、人質とされてしまう。ここからが見どころだ。メイおばさんはドック・オクにビル壁から落とされるが、スパイダーマンがクモ糸で捕らえ、そのまま上空へ逆バンジージャンプ。運よく傘の柄が石像に引っかかってぶら下がるが、老婆の握力ではすぐに限界が来てしまう。スパイダーマンも救出に向かおうとするが、ドック・オクに阻まれてしまう。

ついにメイおばさんはずり落ちていくが、実は落下先はすぐ下の足場だった。一命を取り留めたメイおばさんが安堵して顔を上げると、彼女が引っかかっていた石像は聖母マリアを思わせる女性像だった。

メイおばさんは日頃の信仰に、「ありがとう」と口にする。映画の道徳であるメイおばさんが、道徳によって救われ、道徳に感謝する。ささやかながら、アメコミ映画史上もっとも純粋で、誰にとっても尊いワンシーンの一つだろう。

一難去ってまた一難。メイおばさんはこの直後、再びドック・オクのアームに捕まってしまう。正面のビルからはスパイダーマンがウェブ・スリングの準備をしている。これを待ち構えるドック・オクが背後のアームから刃物を突出させる狡猾さを見たメイおばさんは、「恥を知りなさい!」と漏らし、彼の左こめかみを傘でフルスイング打撃。これによってスパイダーマンは間一髪で難を逃れ、ドック・オクは一時敗退。メイおばさんもスパイダーマンによって救われると、「あなたを誤解していたわ」と改め、スリリングな体験から日常に戻ることとなる。

この一連の場面が素晴らしいのは、メイおばさんが決して「守られるだけの老婦人」として描かれていないからだ。たしかに彼女はドック・オクに連れ去られ、ビル壁から落とされ、スパイダーマンに救われる。しかし同時に彼女は、悪党に「恥を知りなさい」と叱りつけ、最後にはスパイダーマンの危機を救ってみせる。

『スパイダーマン2』は、ピーターが一度スパイダーマンであることをやめ、それでも再びマスクを手に取る物語だ。その背中を押す存在こそ、メイおばさんの「誰の中にもヒーローがいる」という言葉である。これは、現実を生きる我々にとっても深い意味を持つものだ。「だからこそ、正直に勇気を持って 気高く生きられる。そして最後は誇りを持って死ねる。ときには毅然として 大事なものを諦めることもある。自分の夢さえもね」。

『スパイダーマン2』では、メイおばさんという“良心”が、物理的にも精神的にもスパイダーマン/ピーター・パーカーを救うのだ。この夏、『スパイダーマン2』を劇場で観返す時には、スパイダーマンのアクションや勇敢さだけでなく、ぜひメイおばさんの“傘さばき”にも拍手を送りたい。『スパイダーマン2』はヒューマントラストシネマ渋谷にて2026年7月3日(金)より1週間限定でリバイバル上映。

REVIVAL by THE RIVER Vol.1 スパイダーマン2

REVIVAL by THE RIVER Vol.1 スパイダーマン2

上映概要

企画名:REVIVAL by THE RIVER

第1回上映作品:『スパイダーマン2』(2004)

上映期間:2026年7月3日(金)より1週間限定


上映開始時間:全日18:10~

上映劇場:ヒューマントラストシネマ渋谷(東京都渋谷区)

オンラインチケット予約販売:
・TCG会員 6月23日(火)18:00~
・通常販売 6月23日(火)21:00~
※劇場窓口では、6/24(水)より販売開始
チケット料金:1,600円(各種割引サービスはご利用いただけません)

Writer

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中谷 直登Naoto Nakatani

THE RIVER創設者、運営代表。執筆・編集から企画制作・取材・出演まで。数多くのハリウッドスターに直接インタビューを行なっています。お問い合わせは nakataniアットriverch.jp まで。

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