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『バックルームズ』21歳監督、実は映画をあまり観ない ─ 非シネフィル型の若者がハリウッドに起こす革命

Backrooms
© 2026 Backrooms Rights LLC, PC Films, LLC. All Rights Reserved.

映画『バックルームズ』を観れば、21歳のケイン・パーソンズ監督が、これまでどれほど多くの映画的背景を吸収してきたのだろうと思うかもしれない。不条理な空間や現実感の揺らぎからデヴィッド・リンチ作品を連想するなど、その映像表現にさまざまな映画的ルーツを読み取る向きもある。

バックルームズ
© 2026 Backrooms Rights LLC, PC Films, LLC. All Rights Reserved.

ところが当のパーソンズは、いわゆる“映画オタク”とは少し違った映画との付き合い方をしてきたようだ。筆者の単独インタビューでは、「ほかの映画監督たちと同じような形で映画業界を追っているわけではない」と明かしている。

この発言が出たのは、『バックルームズ』が全米興行収入ランキングで首位を獲得し、パーソンズがその快挙を成し遂げた史上最年少監督となったことについて尋ねた時だ。本人は、これほどの成功を「考えたことすらありませんでした」と振り返る。

「僕は、ほかの映画監督たちと同じような形で映画業界を追っているわけではないんです。だから、この作品が興行的にどれくらいの成績を出すのか、そもそもどれくらいの数字を出せる可能性があるのかについて、特に期待を持っていませんでした。」

実際、パーソンズの10代は、映画を観て研究するというより、自ら映像を作ることに費やされていた(そもそもパーソンズは、特に映画という媒体に強いこだわりがあるわけでもないらしい。映画、アニメ、漫画など、さまざまな媒体が均等に好きだとも語っている)。『Backrooms』シリーズを始めたのは16歳。当時は3DCGソフトのBlenderを駆使し、限られたリソースの中で、いかにリアルな空間を作り上げられるかを試行錯誤していた。 物心ついた頃から動画やVFX短編を作り続け、それが「僕という人間を一番よく表す特徴になっていた」とも語っている。

だからといって、映画そのものへの関心が薄いわけではない。映画を頻繁には観ないとしつつ、映画館という場所には強い思い入れを持っている。

オンライン発の『Backrooms』が若い観客を映画館へ導いたことについて尋ねると、パーソンズは映画館を「人と人が最も強くつながる体験のひとつ」と表現。観客全員が同じ場所に座り、同じ瞬間に同じものを感じることを、どこか「宗教的な体験」にも似た共同体験だと語った。

その上で、自身の映画鑑賞について意外な事実を明かしている。

「忙しいのと、そもそも作品を観るのがあまり得意じゃないので(笑)、僕はそれほど頻繁に映画館へ行くわけではありません。でも、映画館にいる時の感覚は、生まれてから今まで一度も変わっていません。あの輝きが失われたことはないです。」

映画を大量に観て、名作の技法を分析し、それを自作へ引用していく。パーソンズは、そんな典型的な“シネフィル出身の映画監督”ではない、新世代だ。16歳からひたすら自分の映像世界を作り続け、インターネットやVFX、建築や空間への好奇心を吸収しながら、結果として映画へたどり着いた。

現在21歳にして、全米興行ランキング1位を獲得。全世界興行収入は3.9億ドルを超え、日本円にしておよそ600億円。同時期に公開されたスティーブン・スピルバーグ監督作『ディスクロージャー・デイ』すら凌駕している。その張本人の感性は、必ずしも膨大な映画を観ることで培われたものではなかった。むしろ10代の頃から自ら映像を作ることに没頭し、従来の映画監督とは少し異なる回路から映画へとたどり着いたのである。もちろん、A24のプロデューサー陣をはじめとする周囲のバックアップも存分にあったにせよ、新しい才能とは得てして、従来の慣習の外側から現れるものなのかもしれない。

映画『バックルームズ』は公開中。

Writer

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中谷 直登Naoto Nakatani

THE RIVER創設者、運営代表。執筆・編集から企画制作・取材・出演まで。数多くのハリウッドスターに直接インタビューを行なっています。お問い合わせは nakataniアットriverch.jp まで。

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