映画『Michael/マイケル』めぐる批評家と観客評価のズレ ─ マイケル・ジャクソン伝記映画に何を求めるのか?

マイケル・ジャクソン初となる伝記映画『Michael/マイケル』が全米公開を迎えると、批評家による事前の評判と一般観客による評価の乖離ぶりが話題を集めている。
2026年4月24日に全米公開を迎えた本作は(日本公開は6月12日)、米レビューサイトRotten Tomatoes上の批評家スコアは40%以下と低調。批評家たちの間で概ね一致している意見としては、生前のマイケルの影の側面がほとんど描かれておらず、彼を聖人化しすぎているといったものだった。

ところが実際に映画が公開されると、一般の観客の間では高い支持を集めた。スコアは97%と、ほぼ満点に近い数字を記録。「最高のミュージカル映画」「ダンスと音楽が素晴らしい」「批評家の言うことなんて気にしないで」と、パフォーマンスを評価する意見が圧倒的となっている。
興収面にも勢いがついている。北米3,900館で公開となった本作は初週末興収予想が6,500万〜7,000万、場合によっては8,000万ドルも視野に入るという注目ぶり。大ヒットを記録したミュージシャン伝記映画『ボヘミアン・ラプソディ』(2018)5,100万ドルや『ストレイト・アウタ・コンプトン』(2015)6,000万ドルをも超えると見込まれている。
批評家のレビューと一般観客の評価や興収が乖離するケースは多いが、本作もその最新事例となった。とりわけ本作の場合は、マイケル・ジャクソンという光と陰の両面を持つスーパースターの伝記映画に、輝かしい音楽映画の要素を求めるのか、それとも闇も抱えた人物の解剖を求めるのかといった観点で、評価が揺れやすい性質を持つと言える。
こうした状況を見てか、マイケル・ジャクソンの甥であるタジ・ジャクソンはSNSでコメント。「悪いけどメディアさん、本当のマイケル・ジャクソンがどんな人物だったのかという物語を、もう操作することはできないんですよ。観客が今回の映画を観る……そして彼らが判断すること。そして、あなたたちはそれが耐えられない」と意見を述べた。
Sorry media, u don’t get to control the narrative anymore of who Michael Jackson truly was. The public gets to watch this movie…they will decide for themselves.
And you can’t handle that.
— Taj Jackson (@tajjackson3) April 21, 2026
タジの主張は、映画の良し悪しというより、マイケルの人物像を擁護するものである。他方、映画が公開されたこのタイミングで、生前のマイケルに新たな疑惑が浮かび上がっている。
米Varietyによると、マイケルと長年親交があり、かつて「第二の家族」とも呼ばれていたカシオ家のきょうだい4人が、幼少期にマイケルから性的虐待を受けていたと主張している。4人は訴訟の中で、マイケルが自身の富や名声、周囲のスタッフらを用いて彼らを取り込み、長年にわたって虐待を行っていたと訴えているという。
カシオ家はこれまでマイケルを擁護する立場を取ってきたことで知られるが、今回の訴えでは、そうした過去の発言もマイケルによる“洗脳”やグルーミングの結果だったと説明している。2019年のドキュメンタリー『Leaving Neverland』を観たことが、自分たちの経験を見つめ直すきっかけになったとも主張している。
一方、マイケル・ジャクソン財団側は疑惑を強く否定。代理人のマーティ・シンガー弁護士は、カシオ家が25年以上にわたってマイケルを擁護し続けてきたことを指摘し、今回の訴えを金銭目的のものだと批判している。報道によれば、カシオ家と財団の間では2020年に和解が成立していたが、その後、さらなる補償をめぐる交渉が行われていたという。
『Michael/マイケル』は、批評家から「都合の悪い部分を描いていない」と指摘される一方、観客からはマイケルの音楽とパフォーマンスを称える熱狂的な支持を集めている。そこへ新たな疑惑報道が重なったことで、批評家の評価と観客の熱狂、そのあいだにあるマイケル・ジャクソンをめぐる見方の違いが、あらためて浮き彫りになっている。
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