『スマッシング・マシーン』ベニー・サフディ監督ロングインタビュー ─PRIDE日本描写、ドウェイン変身、そしてテクニック、すべてを語る

──観客は、どうしても本作を「ドウェイン・ジョンソンがマーク・ケアーを演じている」という視点で見始めると思います。演出の面で、ドウェインではなくマーク・ケアーに見せるための肝は何でしたか?
ほとんどカズ・ヒロの特殊メイクのおかげです。素晴らしい仕事をしてくれました。見てもらえればわかりますが、ここの(口の)部分はドウェインなのに、鼻や眉の形が違うし、耳はカリフラワー耳になっています。彼のタトゥーも隠しています。本当に完璧で、彼がこれほどまでに細部にこだわり、ここまで繊細に表現できたのが信じられないほどです。
それに、彼は格闘シーンや殴り合いのシーンをたくさんこなしたのに、プロステーゼ(補綴具)が取れなかったんです。ドウェインが役になりきることが重要でした。彼にとっても、あのプロステーゼをつけていることが、本当に心地よかったのだと思います。そのおかげで彼は感情を自由に表現し、新しい感情を探究することができたのでしょう。泣いたり、悲しくなったり、笑ったり、ジョークを言ったり。彼は別人のようになったんです。

僕の好きな俳優が、ドウェインについてすごく面白いことを言っていました。ブラッドリー・クーパーです。彼と話したんですけど、「ドウェインは呼吸の仕方すら違っていた」と言っていたんです。その通りです。本当にそうでした。彼は振る舞い方も違っていました。別人でした。それでも、彼は自分自身を役の指針として使っていたんです。それこそが、最も素晴らしい演技を生み出す要素なのです。
──マークとドーンの関係は、とても複雑でした。愛、共依存、悲しみ、怒り……色々なものが混じっていましたね。あなたにとっては壊れたラブストーリーでしたか?それとも、愛があるがゆえに壊れてしまった?

どっちもあると思います。ボブ・ディランに「Don’t Think Twice, It’s Alright」という曲があるんですけど、うまくいかないこともあるよね、って内容なんです。2人が一緒にいる運命じゃなかったってこともある。彼らの場合もそうだったと思う。お互いを理解してほしいと願っている時点で、これは壊れたラブストーリーなんですね。
自分の気持ちをもっと明確に伝えられないのか?そうすれば彼女も彼の立場を理解して助けられるのに。それに、彼が苦しんでいる時だって、彼女も自分のことを脇に置いて、彼のためになれないものか?これはフィフティー・フィフティーのゲームなんです。決して片方のせいだけじゃない。
それを描くことが僕にとってとても重要だったし、その「壊れかけた」部分こそが、物語をこれほどリアルに感じさせる要因だと思う。だって、あの映画での口論が「リアルすぎる」と何人もの人から言われたか、数え切れないほどだから。それが怖いほどリアルなのは、口論というものがそもそも厄介なものだからです。些細なことがきっかけで始まることもあるけど、その些細なことが次第に増幅されて、もっと深い問題へと発展していくんです。

ある場面で、彼女は彼を見てこう言う。「あなたには私のことなんて、何も分かってない」。そして彼女は気付く。「わぁ、こんなに長い間付き合ってるのに、あなたは私のことを全く分かっていないんだ」と。それは本当に暗く、深い気づきです。それは彼が彼女に何かを伝えなかったことから生じています。なぜなら、人間関係では、人は物事を隠したり、脇に押しやったりするものです。もし物事を話し合わなければ、関係は崩壊してしまうのです。
そして、そういうことを表現することには意味があると思う。僕にとっては、そういう姿を見ることが助けになるんだ。そうすれば、「ああ、私だけじゃないんだ」と思えるから。そうやって見ることによって、将来はもう少し自分の気持ちを伝えられるようになるかもしれないし、もっと謝ったり、自分が間違っていたと認めたりできるようになるかもしれない。「そう感じてしまってごめん」ではなくてね。それは謝罪じゃない。それは「私の振る舞いをそう感じてしまってごめんなさい」と言っているに過ぎない。つまり、責任は相手にあると言っているようなものです。違う。「私が間違いを犯してしまってごめんなさい」と言うべきで、それだけのことです。誰かがそうしているのを見たら、それを手本にできるかもしれませんよね。
──本作では、プロではない役者も多く起用したそうですね。
ドウェインとエミリー以外は、みんなそうです。
──えぇっ。しかも、映画の最後に登場する医者も、本物の医者だそうですね。どうやって見つけたんですか?
本物の胸部外科医なんです。大好きな方です。僕の義父が病気で、彼がその手術を担当して、がんの腫瘍を取り除いてくれたんです。彼の患者への接し方がすごく良くて、思いやりがあって、声や顔立ちも素敵だったから、「映画に出てくれない?」って頼んだんです。
それに、彼が昔ボクサーだったことも知っていたから、その経験も活かせると思った。そう、いろんな理由があったんです。ただ彼が本当に好きだったし、義父への接し方も気に入っていました。この映画には彼が出演すべきだと思ったんです。
──ということは、彼を日本に連れてきた?
実はPRIDEのシーンの多くはバンクーバーで撮られているんです。現地を再現してね。だから、あのシーンもバンクーバーで撮られました。
彼を起用した理由は、そのショットで彼が縫合している様子が見えることにあります。相手はドウェインですから、彼に本物の針を刺したくなかったから、彼にこう言ったんです。「この役には最高の外科医を起用するよ」って。
というのも、彼の動きの仕方にも理由があるんです。動きながら縫合し、話している時のその動きは、外科医、つまり自分のやっていることを熟知している人間にしかできない。あのような動きは、バレエみたいに、誤魔化しが効かない。
ドウェインは顔に特別な補綴具を装着していたんです。表面には切り傷の跡があったけど、その下には貫通できないプラスチックの板が入っていて、本人が針で刺されるのを防いでいた。でも、そのせいでさらに難しくなったんです。外すのに5時間もかかるシロモノです。でも彼は、まるで本物の皮膚のように縫い合わせて見せたのです。
──最後に、短い質問。マークは劇中で、日本土産にお皿を購入します。あなたも日本でお気に入りのアイテムを見つけましたか?
はい。あるフリーマーケットに行った時のことですが、とても子供っぽくて可愛らしく、絵付けもとても美しい小さなカップが並んでいました。それを見た瞬間、どうしても手に入れたくなりました。作者の温もりが感じられたからです。これは“買いだ!”と思いましたよ。
本インタビューでは、『スマッシング・マシーン』のラストシーンに込められた驚きの狙いについても、監督から直接解説を聞くことができた。その内容は別記事にて掲載予定。インタビュー動画でも最後部分で確認することができるので、映画を鑑賞された方はぜひお楽しみいただきたい。
映画『スマッシング・マシーン』は公開中。
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