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【ネタバレ】『NOPE/ノープ』エヴァンゲリオンや『AKIRA』オマージュに込められた意味とは ─ ジョーダン・ピール監督らが語る

NOPE/ノープ
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この記事には、映画『NOPE/ノープ』のネタバレが含まれています。

『AKIRA』金田のバイク

予告編の2:32頃にわずかに映し出されるのは、キキ・パーマー演じるエメラルドがバイクで疾走し、『AKIRA』の金田よろしくバイクを横滑りさせる“スライドブレーキ”のシーン。映画ファン・アニメファンならば一目瞭然であろうこのショットは、映画のクライマックス、エメラルドが“Gジャン”から逃れ、ジュープの営んでいた「ジュピター・パーク」に文字通り滑り込む場面に登場する。

ここぞという場面で繰り出されるオマージュには、いったいどんな狙いがあったのか。米Cinema Blendにて、ピール監督は『AKIRA』を「自分にとって本当に大切な映画」だと語っている。

「有名なバイクのシーン、“金田のバイクスライド”をやりました。(本作では)アニメから大きな影響を受けましたが、リアルな本気のオマージュをやろうと決めたのは一大事でした。常に失敗のリスクがあるから。けれども成功したと思います。」

金田のスライドブレーキといえば、国内外さまざまな作品がオマージュを捧げ、時にはパロディとしてきた名場面。監督自身も「アニメーションでは数え切れないほどオマージュを捧げられてきたもの」と述べているが、『NOPE/ノープ』のオマージュは「こういう形では見たことがなかった」と熱を込める。「黒人女性が白いバイクに乗り、『AKIRA』のスライドで警察のテープを切る。思いついた時は“ジョーダン、やるしかないだろ”って思いました」

NOPE/ノープ
©2021 UNIVERSAL STUDIOS

「新世紀エヴァンゲリオン」使徒のデザイン

『AKIRA』と並んで目を引くのは、映画の終盤で“本性”を表す飛行物体・Gジャンのデザインだ。まさしくUFOそのもの、といった風体の円盤が大きく開き、その内部からは目のような器官がのぞいている。実際の生態系に存在するようなルックと動きを実現するため、製作チームはクラゲや鳥を参考にしたほか、「新世紀エヴァンゲリオン」や折り紙のデザイン性を取り入れ、より特異的なビジュアルを生み出している。

視覚効果スーパーバイザーのギョーム・ロシェロン氏は、befores & aftersの取材にて、「新世紀エヴァンゲリオン」から引用したのが、ほかでもない“使徒”のデザインだったことを認めている

意外にもGジャンのデザインは、物語前半のUFO型ではなく、後半の開いた状態が先に考案されたそう。当初は『地球の静止する日』(1951)や『マーズ・アタック!』(1996)の古典的なUFOを参照しながらデザインを検討していたが、すでに脚本を書き終えていたピールが「開いた時はどんな感じなんだろう?」と考えたことが、デザインの順序を入れ替えるきっかけになったという。ロシェロン氏は当時をこう振り返る。

「最初に考えていたのは『ハロウィン』のマイケル・マイヤーズとマスクでした。あれが雲の中にいて、しかも顔がなかったらどんな感じだろうって。その時にすぐ、『新世紀エヴァンゲリオン』だという話で盛り上がったんです。ジョーダンも僕も『エヴァンゲリオン』の大ファンだったし、あのミニマリズムはすごいと思っていました。デザインが機能のためにあるんです。使徒には目的があり、機能があり、作動方法があって、しかもデザインがきちんとそのために仕立てられている。デザインをいくつか検討して、すぐに『エヴァンゲリオン』風のエイリアンを思いつきました。しかも、折り紙のようにとてもシンプル。ジョーダンはすごく気に入っていましたね。」

この使徒から着想したデザインを基に、ピール監督とロシェロン氏は“UFO型”のデザインを開始。先に最終形態を考えたことで、「(UFO型でも)非常にシンプルな形、とても簡素な構造、特徴のなさが必要なんだと気づきました」と語る。

ちなみに『AKIRA』「新世紀エヴァンゲリオン」以外にも、ピール監督はスティーブン・スピルバーグ監督『未知との遭遇』(1977)や、ジョン・カーペンター監督作品など、さまざまな作品にオマージュを捧げている。映画全体のトーンから細部まで、細やかに織り上げられたポップカルチャー愛にも注目すべし。

映画『NOPE/ノープ』は2022年8月26日(金)より公開中。

Sources: Cinema Blend, before & afters

Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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