ノーラン監督、最新作『オッペンハイマー』は『ダークナイト』プロデューサーから企画を持ちかけられていた
クリストファー・ノーラン監督が『TENET テネット』(2020)の次回作として選んだのは、“原爆の父”と呼ばれた米国の物理学者ロバート・オッペンハイマーの生き様に迫る映画『オッペンハイマー(原題:Oppenheimer)』。このたび、本企画誕生の瞬間とも言えるエピソードが到着している。
これを明かしたのは、『12モンキーズ』(1995)や『アメリカン・ハッスル』(2013)、直近では『アンチャーテッド』(2022)を手掛けたプロデューサーのチャールズ・ローブン。『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』(2016)や『スーサイド・スクワッド』(2016)、『ワンダー・ウーマン』シリーズといったDC映画の製作者でも知られるローブンは、ノーラン監督とは『ダークナイト』トリロジーでタッグを組んだ。
『オッペンハイマー』は、監督としてのノーランとローブンが『ダークナイト』ぶりに再タッグを飾る作品となる。ノーランは脚本も兼任するということで自身の持ち込み企画かと思った方もいたはずだが、実はアイデアを提案したのはローブンのほうだったという。米Los Angeles Timesにて、ローブンはノーランとのやり取りをこう振り返っている。
「クリスと(彼の妻でプロデューサーの)エマとは20年来の仲です。一緒に週末を楽しんでいた時に、私がこのアイデアを持ち込んだのです。内容について話していた時、クリスが“そうですね、この本を読ませてください”と言いました。その後、また彼がやってきて、“興味があります”と言ってくれたんです。」
ノーランが一読した本とは、映画の原作となるノンフィクション書籍『オッペンハイマー「原爆の父」と呼ばれた男の栄光と悲劇(上・下巻)』(PHP研究所)。オッペンハイマーの生涯を網羅した同書は、裕福な家庭に生まれ、後にいち国家を滅ぼしうる兵器の開発を主導することになる青年の葛藤や、生前にかかえていた心身面の問題にまで迫っている。
ローブンは、まず第一にノーラン監督に声をかけた理由について「この本は僕の友人から頂いたのですが、(映画を)作るためにはとても特別なフィルムメーカーが必要になると悟ったんです」と語っている。「ピューリッツァー賞も取っていますからね。最高の文学なんです。20世紀における重要な出来事で、これは今日にも共鳴するものだと思います」。
本作にはハリウッドを代表する豪華俳優陣が招集され、すでに2022年3月から撮影がスタートしている。ノーラン監督が仕上げた脚本について「ただただ最高ですよ」と話すローブンは、作品を「ほとんどスリラーです」と形容。さらに「これは言わなければいけないんですけど……」と切り出し、「たくさんの人が“あれを作ったのはクリストファー・ノーランだって?観てみたいな”と思うでしょう」と予告した。
映画『オッペンハイマー(Oppenheimer)』は2023年7月21日に米国公開予定。
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Source: LA Times